ベザント

ベザントとは

ベザントは、中世において広く流通した金貨を指す言葉です。その語源は、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープル（現在のイスタンブール）の旧名であるビザンティオン（Βυζάντιον, Byzántion）のラテン語形に由来します。コンスタンティヌス1世の時代以降、金貨はコンスタンティノープルから供給されることが多く、その地を連想させるものとして認識されていました。

歴史

西ヨーロッパ中世初期においては、金貨はほとんど鋳造されず、銀貨や銅貨が主な通貨として用いられていました。これらの硬貨は、主に地中海地域で少額取引に使用され、金貨は特別な儀礼や尊敬の印として用いられることが一般的でした。

東ローマ帝国で鋳造されたソリドゥス金貨は、後にイスラム世界で作られた金貨と共に高く評価され、これらが一般的に「ベザント」と呼ばれました。これらの金貨は、ソリドゥス金貨をモデルとして作られました。

時代が下ると、ベザントという言葉は、ヴェネツィア共和国ではエジプトのディナール金貨を指すようになり、マルコ・ポーロの東方見聞録では、元王朝の通貨を記述する際にも使用されました。彼の記録によれば、1ベザントは20グロート、133と1/3トロネセルに相当するとされています。

13世紀に入ると、フィレンツェ共和国がフローリン（フィオリーノ）金貨の鋳造を開始したことで、ヨーロッパでは再び金貨が広く流通するようになりました。

10世紀から11世紀にかけてのイングランドでは、金貨は銀貨2シリングと同等の価値を持ち、金銀の交換比率は1:9でした。

ベザントの紋章

紋章学において、ベザントは金の円盤（ラウンデル）を指します。紋章における円盤の名称の多くは、コインの名称に由来しています。

まとめ

ベザントは、中世ヨーロッパにおいて重要な役割を果たした金貨であり、その歴史は東ローマ帝国にまで遡ります。その名称は、ビザンティウム（コンスタンティノープルの旧名）に由来し、さまざまな地域で異なる通貨を指す言葉として使用されていました。紋章学においても、ベザントは特定の図形を表す用語として用いられています。

もう一度検索