ベッカムに恋して

『ベッカムに恋して』（原題: Bend It Like Beckham）は、2002年に公開されたイギリス映画で、女子サッカーを題材にした作品です。

概要

原題は、イングランドのスター選手デビッド・ベッカムのようにボールを曲げる、つまり「ベッカムのように蹴りたい」という願望と、彼のプレイスタイルが人生を変える力を持つことへの憧憬を込めています。ベッカム自身は出演していませんが、映画を鑑賞しています。映画は、女子サッカーを軸に、移民としての文化的な差異、性別の問題、そして思春期の恋愛模様を織り交ぜながら、多角的に描いています。

主演を務めたパーミンダ・ナーグラにとって、本作は彼女のキャリアにおける出世作となりました。また、ロカルノ国際映画祭観客賞や平壌映画祭音楽賞など、数々の国際的な映画賞を受賞しています。サウンドトラックには、B21やバリー・サグーといった、イギリスを拠点に活動するインド人アーティスト（UKエイジアン）の楽曲が多数使用されており、音楽面でも注目される作品です。さらに、本作は北朝鮮とイギリスの国交10周年を記念して、北朝鮮のテレビ局で初めて放映された欧米映画となりました。

あらすじ

物語の舞台は、ロンドン郊外のヒースロー近郊。インド系シク教の伝統を重んじる家庭で育ったジェス（パーミンダ・ナーグラ）は、サッカーとデビッド・ベッカムに夢中の18歳。ある日、公園でサッカーをしているところをジュールズ（キーラ・ナイトレイ）にスカウトされ、彼女が所属するクラブチームに誘われます。コーチのジョー（ジョナサン・リース＝マイヤーズ）もジェスの才能に気づき、彼女を高く評価します。しかし、保守的な母親（シャヒーン・カーン）にサッカーをしていることがバレてしまい、猛反対を受けます。姉（アーチー・パンジャビ）が両親の期待通りインド人男性との結婚を控える中、ジェスは家族に内緒でサッカーを続けることを決意します。ジョーはジェスの両親に、彼女の才能を無駄にしないでほしいと説得を試みますが、かつてクリケット選手として活躍しながらもインド人というだけで差別を受けた経験を持つ父親（アヌパム・カー）は、ジョーの言葉に耳を傾けません。

そんな中、ジェスはチームの一員として試合に出場し、ドイツ遠征にも嘘をついて参加します。遠征中、ジェスはジョーと惹かれ合うようになりますが、二人がキスをしていると誤解したジュールズは、決勝戦に出場しないと言い出します。さらに、決勝戦の日が姉の結婚式と重なってしまい、ジェスは究極の選択を迫られます。結婚式当日、憔悴したジェスを見かねた父親は、「姉の結婚式で笑顔になれないなら、行け。戻ってきたら、最高の笑顔を見せてくれ。頑張ってこい」と、娘の背中を押します。決勝戦で、ジェスはジュールズとの見事な連携プレーで観客を魅せ、フリーキックをベッカムさながらのカーブシュートで決め、チームを優勝に導きます。そして、二人はアメリカでのスポーツ奨学金を獲得し、アメリカへと旅立つことになります。空港でチームメイトや友人たちに囲まれ、祝福を受けるジェスは、その場に居合わせた憧れのベッカムを目にするのでした。

キャスト

ジェス：パーミンダ・ナーグラ
ジュールズ：キーラ・ナイトレイ
ジョー：ジョナサン・リース＝マイヤーズ
ジェスの母：シャヒーン・カーン
ジェスの父：アヌパム・カー
ジェスの姉：アーチー・パンジャビ
デビッド・ベッカム（記録映像）

スタッフ

監督：グリンダ・チャーダ
製作：ディーパク・ナーヤル、グリンダ・チャーダ
脚本：グリンダ・チャーダ、グルジット・ビンドラ、ポール・マエダ・バージェス
撮影：ジョン・リン
編集：ジャスティン・クリシュ

受賞歴

ロカルノ国際映画祭／観客賞（2002年）
平壌国際映画祭／音楽賞（2004年）

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