ベネラ9号

ベネラ9号：金星の謎に迫った探査機

1975年、ソビエト連邦は金星探査機ベネラ9号を打ち上げました。総重量4936kgのベネラ9号は、軌道機（オービター）と着陸機（ランダー）からなる画期的な探査機でした。この探査機は、金星周回軌道への到達、そして金星表面からの画像送信という、人類にとって新たな一歩を踏み出しました。

オービター：金星を周回し観測

オービターは、円筒形の本体に太陽電池パドルと高利得アンテナを搭載した構造でした。本体下部には推進系、上部にはランダーを収容する球状のコンテナが接続されています。1975年10月20日、オービターは金星周回軌道に投入されました。

その主なミッションは、ランダーからのデータ中継と、金星の大気や雲の層に関する観測でした。赤外線分光計、紫外線分光計、測光器、分光偏光計など、多様な観測機器を搭載し、10月26日から12月25日にかけて17回の観測を実施しました。これらの機器は、金星大気の組成や温度、雲の特性などを詳細に分析するために使用されました。

ランダー：金星表面の初撮影に成功

10月20日、オービターから分離したランダーは、10月22日、金星表面への着陸に成功しました。着陸地点は北緯約31度、東経約291度のベータ地域付近で、岩だらけの斜面でした。このランダーは、金星表面からの画像を地球に送信した最初の探査機となりました。

着陸は、金星の大気圏突入時の激しい熱と圧力という困難を伴いました。この困難を克服するために、ランダーは液体冷却システムと、突入時の減速のためのエアロシェル、パラシュート、ブレーキなどを備えていました。着陸後53分後、オービターとの通信が回復し、観測データの送信が開始されました。

ランダーは、温度と圧力センサー、加速計、分光計、ネフェロメーター、パンカメラなどを搭載しており、金星表面の温度（約485℃）、圧力（約9MPa）、大気の組成（塩酸、フッ化水素酸など）などを測定しました。また、金星表面の画像は、岩が多く、塵が少ない、比較的平坦な地形であることを示しました。ただし、予定されていた360度のパノラマ画像は、カメラのレンズカバーが開かなかったため180度分しか撮影できませんでした。

ベネラ9号の成果とその後

ベネラ9号の探査は、金星に関する私たちの理解を大きく前進させました。金星表面の過酷な環境、大気の組成、雲の特性などが明らかになり、後の金星探査計画の礎となりました。ベネラ9号の後継機であるベネラ10号も同様のミッションを実施し、金星探査の成功に貢献しました。これらの探査機によって得られたデータは、現在も金星研究に役立てられています。ベネラ9号は、惑星探査の歴史に大きな足跡を残した探査機と言えるでしょう。

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