ベネラ10号

ベネラ10号：金星の謎に迫ったソ連の探査機

ベネラ10号は、ソビエト連邦が1975年6月14日に打ち上げた無人金星探査機です。この探査機は、金星軌道上から観測を行うオービターと、金星表面に着陸して観測を行うランダーという、2つの主要な部分から構成されていました。

オービター：金星上空からの精密観測

オービターは1975年10月23日、金星の大気圏に突入。その任務は、ランダーからのデータ中継に加え、金星の雲の層や大気に関する探査でした。高度な観測機器を搭載し、多角的な観測を行いました。搭載機器は、赤外線分光計、紫外線光度計、偏光計、分光計、ライマンα線分光計、バイスタティックレーダー、電波掩蔽装置、磁気センサ、紫外線カメラ、可視光カメラ、静電分析器、イオントラップ、粒子検出器など多岐に渡り、金星大気の組成、構造、磁場などを詳細に調べました。

オービターの本体は円筒形で、2枚の太陽電池パドルと高利得パラボラアンテナを備えていました。円筒形の底には推進系モジュール、頂部にはランダーを収容する直径2.4メートルの球体が接続された複雑な構造となっていました。

ランダー：金星表面からの貴重なデータ

ランダーは、オービターから分離され、1975年10月25日に金星表面に着陸しました。極めて高温高圧な金星の環境において、ランダーは着陸時の熱から機体を保護するために、液体冷却システムと着陸前の冷却システムを用いていました。さらに、大気圏突入時の減速には、半球状の耐熱殻、パラシュート、ブレーキ、着陸クッションといった多段階の減速システムを採用しました。

着陸地点は、ベネラ9号の着陸地点から約2200キロメートル離れた、北緯15.42度、東経291.51度付近でした。ランダーは着陸後65分後には、オービターとの通信を回復させ、観測データの送信を開始しました。

ランダーが測定したデータには、地表の風速（3.5m/s）、気圧、気温、地表の明るさなどが含まれていました。また、ベネラ10号は、ベネラ9号に続いて金星表面の白黒画像を地球に送信した探査機となりました。撮影された画像は、パンケーキ状の溶岩地帯の様子を捉えていました。ただし、ベネラ9号と同様に、カメラのレンズカバーが完全に開かなかったため、360度のパノラマ画像は撮影できず、180度の画像にとどまりました。

ランダーは、気温・気圧センサー、加速度計、可視光・赤外線光度計、後方散乱マルチアングル比濁計、質量分析器、パノラマ視程計、風速計、ガンマ線分光計、ガンマ線密度計、電波ドップラー測定器など、様々な機器を搭載し、多様な観測を行いました。

ベネラ10号の功績

ベネラ10号は、オービターとランダーの連携によって、金星大気と地表に関する貴重なデータを地球に送ることに成功しました。そのデータは、金星に関する私たちの理解を深める上で大きな役割を果たしました。特に、金星表面の画像が地球に送信されたことは、金星の地質学的特徴を直接的に知る上で大きな一歩となりました。ベネラ計画における重要な成果の一つとして、現在も高く評価されています。

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