ベノミル

ベノミル（Benomyl）について

ベノミルは、カーバメート系の殺菌剤の一つで、特に農業において多くの用途を持っています。この薬剤は、デュポン社によって開発され、1971年4月21日に日本で農薬として登録されました。1999年のデータでは、日本はベノミルの原体として29トン、製剤として243トンを輸入していることが示されています。代表的な商品名には「ベンレート」があります。

用途

ベノミルは、主にリンゴ、ナシ、ブドウのうどんこ病や黒星病、柑橘類のそうか病、テンサイの褐斑病、さらには稲の種子病など、様々な病害に効果があります。また、種子や球根の消毒、存放時におけるミカンの青カビの防除にも使われるため、農家や園芸家にとって非常に重要な農薬となっています。現在、ベノミルの生産および販売は住友化学が行っており、家庭園芸向けには住友化学園芸が流通させています。

特性

ベノミルの外観は白色の固体で、特異な臭いを持っています。この化合物は不燃性であるものの、高温で分解し、有毒なフュームを発生させる可能性があります。そのため取り扱いには注意が必要です。なお、毒物及び劇物取締法には分類されていませんが、土壌中での分解は、カルベンダジムとイソシアン酸ブチルという物質を生成し、前者は残留性があり、最長で2年ほど残ることがあります。

また、ベノミルは水生生物に対して強い毒性を示し、土壌中の有益な微生物に悪影響を与えることもあります。これにより、植物の生育に対する影響が懸念されることもあります。

法律と歴史的背景

アメリカやイギリスでは、ベノミルに起因する健康問題が報告されており、特に眼に先天性障害を持つ子どもを抱える家族がデュポン社に対して訴訟を起こし、同社は敗訴した事例もあります。このような背景を受けて、デュポン社は2002年にベノミルの製造を中止することを決定しました。しかしながら、日本では引き続き高い支持を受けていたため、同年にその商標と日本での事業は住友化学に譲渡されました。それ以後、日本国内向けには住友化学が製造・販売を行い、家庭園芸向けには住友化学園芸による流通がなされています。

デュポン社が製造していた時期には、日本国内での販売は日本農薬や、家庭園芸向けに武田園芸資材（現：住友化学園芸）や三共（現：第一三共）を通じて行われていたことも知っておくと良いでしょう。

参考文献

• - 植村振作、河村宏、辻万千子、冨田重行、前田静夫著『農薬毒性の事典 改訂版』三省堂、2002年。
• - 国際化学物質安全性カード

このように、ベノミルは多くの農作物に効果を及ぼす重要な農薬ですが、その歴史や特性を理解して、適切に扱うことが求められます。

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