テンサイ

テンサイ：砂糖の主要原料とその栽培

概要

テンサイ(学名: Beta vulgaris ssp. vulgaris)は、ヒユ科フダンソウ属に属する二年生植物で、サトウダイコンとも呼ばれます。ダイコンとは異なる科に属し、寒さに強い性質を持つため、中高緯度地域で広く栽培されています。サトウキビと並ぶ砂糖の主要原料であり、根から搾り取った汁を煮詰めることで砂糖が生産されます。世界全体の砂糖生産量の約35％を占め、日本では北海道を中心に栽培され、国内生産量の約80％、国内消費量の約30％を占める甜菜糖の原料となっています。葉や搾りかす(ビートパルプ)は家畜飼料として利用されています。


テンサイの特徴

地中海沿岸原産で、根部と葉から構成されます。葉は長円形で、生育最盛期には30～40枚が着生し、生育期間全体では50～60枚の葉を展開します。根は肥大した直根と、そこから分岐する側根から成り、直根はショ糖を蓄積します。条件が良ければ深さ2メートルにも達し、水分を吸収します。直根の断面には維管束が同心円状に8～12層形成され、中心部、特に維管束輪に隣接する部分でショ糖濃度が高くなります。直根は600～1200グラムにまで肥大し、14～20％のショ糖を含みます。テンサイに含まれるベータブルガロシド類には、血糖値上昇抑制効果が認められています。生のテンサイは臭みが強いため、生食には適しません。


テンサイの生育ステージ

テンサイの生育は、幼苗期、繁茂期、登熟期の3期に分けられます。幼苗期は気温の上昇とともに葉の展開が促進され、7月には大型の葉を展開します。繁茂期(7月中旬～9月上旬)には葉面積指数が最大に達し、盛んな光合成活動により根部の肥大が進みます。登熟期(9月中旬以降)には根部の肥大と糖分蓄積が盛んになり、地上部の葉は黄化し、枯れ始めます。


テンサイの栽培条件

気象条件:

原産地である地中海沿岸は、夏は高温乾燥、冬は比較的雨量が多い気候ですが、現在は温帯から亜寒帯を中心に栽培されています。灌漑によってステップ気候や砂漠気候でも栽培可能です。温度は発芽、生育、糖分蓄積に大きく影響し、発芽最適温度は25℃です。低温では春化現象が起こり、抽苔(茎が伸びて開花する現象)して収量が減少するため注意が必要です。生育期間(170～200日)に必要な積算温度は24.00～30.00℃、平均気温は12.3～16.4℃です。葉の光合成には35℃が最適ですが、高温は呼吸量も増加させるため、根の生育には日中25℃、夜間20℃程度の温和な条件が適しています。根中糖分についても同様で、生育後期の冷涼な気温が高糖分をもたらします。特に夜温は10℃以下が好ましいです。降水量は生育各期とも100mm必要で、年間600mmが理想的ですが、その配分が重要です。収穫前2カ月の降雨は根や生体重を増加させる一方で、糖分や純糖率を低下させます。日照量は光合成に影響するため、生育や収量に大きく関与します。


圃場条件:

テンサイの根は地中深く伸張するため、土壌条件が重要です。排水良好で地下水位の高くない壌土や砂質壌土が適しています。土壌は深く、腐植に富むものが好ましく、硬盤層がある場合は心土破砕や深耕が必要です。土壌pHは中性～弱アルカリ性(pH7.0～7.5)が適していますが、高pHではそう根病が発生しやすいため、そう根病の懸念がある場合はpH6.0程度に調整します。テンサイはホウ素を多く必要とし、硝酸態窒素を好むため、施肥設計には注意が必要です。窒素の過剰施用は茎葉の過繁茂を招き、根中糖分を低下させる可能性があります。


テンサイの栽培の歴史と品種改良

Beta vulgarisは紀元前6世紀頃から葉菜として栽培されてきました。根菜としての利用が始まったのは15世紀以降で、砂糖原料としての栽培は18世紀半ば、マルクグラーフによる砂糖の分離成功以降です。ナポレオンによる大陸封鎖は、甜菜糖の普及を加速させました。日本では1879年に官営工場が建設され、第一次世界大戦後の砂糖価格高騰を機に本格的な栽培が始まりました。現在では、重量取引から糖分取引に移行したことに伴い、高糖分品種の栽培が主流となっています。


テンサイの病害虫

主な病害にはそう根病、褐斑病、苗立枯病、根腐病・葉腐病、黒根病などがあり、害虫としてはヨトウガ、テンサイトビハムシ、テンサイモグリハナバエ、カメノコハムシなどが挙げられます。


参考文献

衛傑文・楊関坭・他編 編『現代中国地誌』古今書院、1988年。ISBN 4-7722-1104-7。

菅原, 寿一 (2001年10月31日). “北海道におけるテンサイ生産と病害虫防除のあゆみ”. 農薬ガイドNo.100/J. アリスタライフサイエンス. 2020年1月29日閲覧。

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