ベル☆スタア強盗団

『ベル☆スタア強盗団』は、伊藤明弘による日本の漫画作品で、西部開拓時代を舞台にしたアクション活劇です。1932年のカナダで、ペイパーバック作家ベイカー夫人のもとに、ある男が祖父の遺品である拳銃の鑑定を依頼に訪れるところから物語は始まります。その拳銃は、盗掘されたとされていた「ベル・スタア」の遺品でした。

時は遡り1874年。西部開拓時代のアメリカ。南部から出稼ぎに来た少女マイラ・ベル・シャーリイは、訪れた街で強盗事件に巻き込まれてしまいます。命からがら逃げ出すものの、なぜか強盗犯として指名手配されてしまうベル。怪我をしていたところをスタア兄妹に助けられますが、彼らもまた、土地を守るために銀行から巨額の借金を背負わされていました。そんな中、銀行員のティモンズから、銀行の現金を輸送する計画の情報がもたらされます。土地を守るため、ベル達は現金強奪を決意。無法者、保安官、騎兵隊が入り乱れる大乱戦の火蓋が切って落とされます。

物語の中心人物であるマイラ・ベル・シャーリイ、通称ベル・スタアは、南部のカーセイジ出身の少女。当初は25歳とされていましたが、物語の中では20歳という設定です。幼い頃から冒険や決闘に憧れ、銃の腕も達者でしたが、ある事件をきっかけに銃声が怖くなり、銃を撃てなくなっていました。しかし、不運な出来事が重なり強盗犯として指名手配されたことで、再び銃を手に取ります。仲間との絆を大切にし、強く生きる誇り高い女性として描かれています。彼女は事件後、15年後の1889年に遺体で発見されたとされています。

スタア兄妹の長男であるサム・スタアは、白人の父親とチェロキー族インディアンの母親を持つため、白人社会からもインディアンからも疎外され、ブライアータウン郊外で暮らしています。銀行や鉄道会社に土地を狙われ、多額の借金を背負わされています。真面目な性格で、最後まで現金強奪には反対していました。しかし、一度決めた後は、ベルや妹たちを守るために奮闘します。事件後は、ベルたちとアウトローのための宿屋「ヤンガース・ベント」を開きます。

妹のジョウンは現実的な性格で、頼りない兄を叱咤することが多いです。土地を守るため、現金強奪に最も早く賛同しました。美人ではありますが、色っぽいシーンはあまり描かれていません。ジョスリンは、同じく妹で、土地を守ることにはあまり執着していませんが、現金強奪には積極的に参加します。姉たちとは異なり、要領の良い性格で、お色気も持ち合わせており、ナイフ投げが得意です。

リチャード・ティモンズは、ブライアータウンの銀行員で、ベル達に現金輸送の情報を流した張本人であり、自らも現金強奪に加担します。ただし、荒事は苦手で銃もまともに撃てません。恋人の娼婦テリーサのために現金を使い込んでいます。

凄腕のガンマン、ウィリアム・マクベインは、かつて北軍の兵士で、ある目的のために現金強奪に参加します。連邦保安官補のルーク・カーボは、ベルを捕えるため（射殺するため）に執念を燃やします。カーボの助手であるマイルズは、元北軍の砲術兵で、大砲を扱えます。冷酷な第5騎兵連隊長のガランド大佐は、過去の事件により秘密裏に解散させられた騎兵隊を率いてカーセイジの街に駐留しており、ある目的のため現金輸送列車に乗り込みます。

ブライアータウンの武器屋の主人ブロンクは、ジョスリンに惚れて協力を申し出ます。ティモンズの恋人であるテリーサは、命がけの冒険に出る彼を優しく送り出します。保安官は、運が良いだけで早撃ちが得意というわけではありません。連邦保安官ブリゲイドは、暴走するカーボと上役である判事に挟まれ苦労しています。銀行の頭取は、鉄道会社と結託してスタア家の土地を奪おうと企んでいます。

その他にも、南部出身の気のいい馬車屋のジョージとアンディ、伝説のガンマンであるコール・ヤンガー、ニューヨークの新聞記者メイヤーズなど、魅力的なキャラクターが登場します。

本作は、当初『アクションヒップ』に連載されましたが、同誌廃刊に伴い『月刊コミックドラゴン』に移籍し完結しました。単行本は富士見書房、角川書店、白泉社、小学館から刊行されており、複数の出版社から同一作品が発行されています。小学館版は単巻に合本された再編集版です。ベルの真実を記したというコール・ヤンガーの自伝や、ベルの伝記を著したメイヤーズの存在など、史実とフィクションが巧みに織り交ぜられているのも本作の魅力です。

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