ベルツ肺吸虫

ベルツ肺吸虫 (Paragonimus pulmonalis)

概要

ベルツ肺吸虫は、肺吸虫科に属する寄生虫で、主に東アジア、特に日本や台湾に広く分布しています。この虫は肺吸虫症（肺ジストマ症）の原因となる病原菌であり、体長約10-12mm、体幅5-7mm、厚さ3-5mmの卵形をしています。淡紅色の体を持ち、平坦な腹面と丸みを帯びた背面が特徴です。口部と腹部には吸盤が存在し、成虫は大型哺乳類の体内で嚢胞を形成し、単為生殖を行います。

分類と発見の歴史

この寄生虫は1878年にオランダの動物園で発見され、最初はウェステルマン肺吸虫として知られていました。しかし、宮崎によってこの種が三倍体であることが認識され、別種として「ベルツ肺吸虫」と命名されることとなりました。この発見は、ベルツによる人間の喀痰からの虫卵発見から始まり、後の研究でさらなる理解が深まりました。

分布と特徴

ベルツ肺吸虫は、多くの場合淡水産のカニを第二中間宿主とし、主にモクズガニやチュウゴクモクズガニといった種類に寄生します。他にニホンザリガニ、チョウセンザリガニ、アメリカザリガニも知られていますが、ウェステルマン肺吸虫はサワガニに寄生することが多いです。これによって、感染の仕方や宿主での生態が異なります。

生活環

ベルツ肺吸虫の生活環は他の肺吸虫と似ており、卵が孵化してから第一中間宿主である淡水産巻貝に感染し、次にこの貝から第二中間宿主の淡水産カニへと感染が広がります。最終的には、カニが生食されたり、他の動物に捕食されることで大型哺乳類の体内へ侵入します。最終宿主としてはヒトやイヌ、ネコが好まれ、体内で成虫となり、単為生殖を行い、虫卵を排出します。

症状と影響

感染が進むと、虫は肺の中に嚢胞を作り出し、これが血痰を引き起こすことがあります。一方で、ウェステルマン肺吸虫とは異なり、肺実質に直接寄生する傾向があります。また、異所寄生が発生することもあり、特に脳に侵入すると深刻な症状を引き起こし、場合によっては命に関わることもあるため注意が必要です。

衛生面での注意点

日本では、ベルツ肺吸虫は食品媒介の寄生虫疾患として対策が求められています。感染した生物の生食や、調理器具の適切な洗浄が重要です。また、感染した二次宿主を生食することは避け、火を通すことで安全を確保することが推奨されています。

おわりに

ベルツ肺吸虫は、感染に伴う様々なリスクを持つ寄生虫です。その生活環や特徴を理解することは、感染防止の観点から非常に重要です。特に、食文化において生食が一般的な地域では、その危険性を知ることが大切です。

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