ベルトラン・ボネロ

ベルトラン・ボネロ

フランスの多才な芸術家、ベルトラン・ボネロは、映画監督、脚本家、そして作曲家として知られています。1968年9月11日、フランス南部の都市ニースに生まれた彼は、その後パリとカナダのモントリオールを拠点に創作活動を展開しています。

彼の映画監督としてのキャリアは、1996年に発表した短編映画『Qui je suis』から始まりました。これはイタリアの著名な映画監督、ピエル・パオロ・パゾリーニの生涯から着想を得た作品です。そして、1998年には初の長編映画『何か有機的なもの』を手がけ、ベルリン国際映画祭のパノラマ部門で上映され、その才能が広く認識されるきっかけとなりました。

2000年代に入ると、ボネロは国際的な映画祭で高い評価を獲得していきます。2001年に制作した『ポルノグラフ』は、フランスの名優ジャン＝ピエール・レオを映画監督役に起用した作品で、カンヌ国際映画祭の国際批評家週間に出品され、見事に国際映画批評家連盟賞を受賞しました。続く2003年の『ティレジア』は、カンヌ国際映画祭の最も権威ある部門であるコンペティション部門に正式に選出されました。2008年にはマチュー・アマルリックを主演に迎えた『戦争について』を発表し、マイアミ映画祭のカッティング・エッジ・コンペティション部門でグランプリを受賞するなど、その評価を確固たるものとしました。

近年の代表作としては、19世紀末から20世紀初頭にかけてのパリに実在した高級娼館を舞台にした2011年の『メゾン ある娼館の記憶』が挙げられます。この作品もカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、セザール賞では7部門にノミネートされるなど、芸術性と話題性の両面で成功を収め、特に衣装デザイン賞を受賞しました。また、2014年にはファッション界の伝説的デザイナー、イヴ・サン＝ローランの生涯を描いた伝記映画『SAINT LAURENT/サンローラン|SAINT LAURENT_サンローラン』を製作。主演にギャスパー・ウリエルを迎え、再びカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映されました。この作品は、同年のアカデミー賞外国語映画賞のフランス代表にも選ばれています。2016年には、パリを舞台にテロを計画する若者たちを描いた社会派サスペンス『ノクトラマ/夜行少年たち』（製作時のタイトルは『Paris est une fête』）を発表。カンヌへの出品は見送られたものの、サン・セバスティアン国際映画祭やマール・デル・プラタ国際映画祭など、主要な国際映画祭のコンペティション部門で上映され、物議を醸しつつも高い評価を得ました。

ボネロの作風には、イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティからの影響が見られると言われています。また、視覚的な特徴として、複数の画面を同時に表示するスプリットスクリーン技法を好んで用いることが挙げられます。特筆すべきは、彼が映画監督であると同時に、優れた作曲家でもある点です。クラシック音楽に深い造詣を持ち、自身の監督作品の多くで自ら音楽を手がけており、映像と音楽の融合を重視しています。

プライベートでは、『SAINT LAURENT/サンローラン|SAINT LAURENT_サンローラン』まで多くの作品で撮影監督を務めたジョゼ・デエーは元妻にあたります。

監督作品リスト

長編映画

Quelque chose d'organique（何か有機的なもの, 1998年）
Le Pornographe（ポルノグラフ, 2001年）
Tiresia（ティレジア, 2003年）
De la guerre（戦争について, 2008年）
L'Apollonide: Souvenirs de la maison close（メゾン ある娼館の記憶, 2011年）
Ingrid Caven, musique et voix（2012年）
Saint Laurent（SAINT LAURENT/サンローラン|SAINT LAURENT_サンローラン, 2014年）
Nocturama（ノクトラマ/夜行少年たち, 2016年）
Zombi Child（2019年）

短編映画

Qui je suis（1996年）
The Adventures of James and David（2002年）
Cindy: The Doll Is Mine（2005年）
My New Picture（2006年）
Where the Boys Are（2010年）
* Sarah Winchester, opéra fantôme（2016年）

もう一度検索