ベルリン・テンペルホーフ空港

テンペルホーフ空港：ベルリンの歴史を刻んだ飛行場から都市公園へ

テンペルホーフ空港は、かつてドイツの首都ベルリンに存在した国際空港です。ベルリン市街地の南、元々はプロイセン軍の練兵場だった場所に1923年、開港しました。第二次世界大戦中の1941年には、ヒトラーによるベルリン改造計画「ゲルマニア計画」の一環として、建築家エルンスト・ザーゲビールによってターミナルビルが改築され、現在の姿となりました。戦時中は主に軍用飛行場として利用されていました。

ベルリン大空輸：冷戦下の重要な拠点

冷戦時代の1948年、ソ連によるベルリン封鎖という歴史的危機が発生します。この時、テンペルホーフ空港は、イギリスやアメリカを中心とした西側諸国による「ベルリン大空輸」の主要拠点となりました。西側諸国は、空路を通じて西ベルリン市民に食料や物資を供給し続け、ソ連の封鎖を打ち破りました。この大空輸は、テンペルホーフ空港の戦略的な重要性と、国際的な協力の象徴として記憶されています。

閉鎖までの経緯：大型化への対応と市民投票

戦後、テンペルホーフ空港は西ベルリンの主要空港として機能していましたが、滑走路が狭く、拡張が困難であるという課題を抱えていました。旅客機のサイズが大型化するにつれて、テンペルホーフ空港の発着便数は減少し、ベルリン・テーゲル空港など他の空港へと移転が進みました。

利用者の減少による赤字と、ドイツ再統一後のベルリン・ブランデンブルク国際空港への機能集約という流れの中で、テンペルホーフ空港の閉鎖が決定されました。しかし、閉鎖には多くの反対意見があり、2008年4月27日には閉鎖の是非を問う市民投票が実施されました。投票の結果は閉鎖反対が6割を超えましたが、投票率が3割にとどまったため、テンペルホーフ空港は2008年10月31日に閉鎖されました。閉鎖直前には、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が、ベルリン・フィルハーモニーの火災による被害を受け、空港の格納庫で演奏会を開催するという、異例の出来事もありました。

閉鎖後：公園化と新たな役割

閉鎖後、テンペルホーフ空港の敷地は公園として整備され、市民の憩いの場となりました。広大な敷地は、市民の散歩やレクリエーションに利用され、緑豊かな空間を提供しています。2015年には、フォーミュラE選手権のレースが開催され、空港の駐機場エリアがコースとして使用されました。

近年では、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、ドイツ国内に避難してきたウクライナ難民の一部が、空港敷地内に設置された仮設住居で生活しています。テンペルホーフ空港は、かつては国際的な航空拠点として、そして現在は都市公園として、また、現代社会の難民問題の一端を担う場所として、その存在感を示し続けています。

関連事項

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ゲルマニア計画
* フリードリヒスハイン＝クロイツベルク区 (テンペルホーフ空港に近接し、トルコ系住民が多い地域)

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