ベロ細胞

ベロ細胞について

ベロ細胞（Vero cell）は、アフリカミドリザルの腎臓上皮細胞から由来する細胞株で、多くの研究機関で広く使用されています。この細胞株は、1962年5月27日に日本の千葉大学医学部の安村美博によって樹立されました。彼は、エスペラント語で「緑色の腎臓」を意味する"Verda Reno"を略して、"Vero"という名称を付けました。この細胞株は、良好な増殖特性を持ち、さまざまな研究に利用されています。

歴史と利用

1964年に、93世代目のベロ細胞がアメリカの国立アレルギー感染症研究所（NIAID）に供給され、その後、世界中の研究機関に配布されました。このようにして、ベロ細胞はウイルスの研究やワクチンの製造において重要な役割を果たすようになりました。

ベロ細胞は、特に大腸菌由来の毒素のスクリーニング、ウイルスの増殖、トリパノソーマなどの真核寄生生物の宿主細胞としての用途があります。細胞自身は不死化されており、多くの世代にわたって培養が可能ですが、癌細胞ではないため、腫瘍を形成することはありません。これにより、ワクチンの製造にも適しています。特に、1980年代からフランスのメリュー研究所（現・サノフィパスツール社）がこの細胞を利用して、不活化ポリオウイルスワクチンなどの製造を行っています。

ベロ細胞の特性

ベロ細胞はインターフェロンを生成しないため、多様なウイルスに対して感染が可能です。また、ベロ細胞の遺伝特性も注目されています。一般的に、正常な細胞は60本の染色体を持つ一方で、ベロ細胞は58本の染色体しか持たず、これがインターフェロン遺伝子の欠如につながっていると考えられています。

2014年には、日本の研究者によってベロ細胞の全ゲノム配列が解読されました。この研究では、一般的に知られていた58本ではなく、59本が典型的であることが示され、12番染色体にI型インターフェロンの遺伝子クラスターや細胞周期を制御する遺伝子が欠失していることも明らかになりました。

現代における意義

ベロ細胞は、最近では新型コロナウイルスに関する研究など、パンデミックに対する研究でも重要な役割を果たしています。ウイルスの分析やワクチンの開発は、ベロ細胞による増殖検証や実験によって進められています。これは、ベロ細胞の特異な特性が、感染症の研究において多くの可能性をもたらすことを示しています。

このようにベロ細胞は、その歴史的背景と独自の特徴から、多くの研究や医療において不可欠な資源として位置付けられています。今後も、さらなる研究や応用が進むことが期待されます。

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