ベンジャミン・ハーディン・ヘルム

ベンジャミン・ハーディン・ヘルムは、1831年6月2日にケンタッキー州バーズタウンで、ジョン・L・ヘルムとルシンダ・バーバーの間に生まれました。父はケンタッキー州知事を務めた政治家であり、ヘルム自身も幼い頃から政治や法律の世界に足を踏み入れました。彼はケンタッキー士官学校で学び始めた後、ウェストポイントの陸軍士官学校に進学し、1851年に卒業しました。卒業後はアメリカ第2竜騎兵隊に配属されましたが、健康上の理由から軍を辞職し、法律の道に進みました。

ルイビル大学とハーバード大学で法律を学んだヘルムは、1853年に卒業すると、父と共に法律事務所を開業しました。その後、ケンタッキー州下院議員や州検察官を歴任し、政治家としての地位を確立しました。また、1856年にはエミリー・トッドと結婚し、これにより、エイブラハム・リンカーンと義理の兄弟となりました。

南北戦争が勃発すると、ケンタッキー州は中立を保ちましたが、ヘルムは南軍への従軍を決意し、アメリカ陸軍主計官の職を提案したリンカーンの申し出を辞退しました。彼は南軍の大佐としてケンタッキー第1連隊を立ち上げ、その後准将に昇進し、ケンタッキー第1旅団、通称「孤児旅団」の指揮を執ることとなりました。

ヘルムの軍歴は、シャイローの戦いやヤズーシティでの装甲艦保護任務など、数々の激戦に彩られています。1863年には、タラホーマ方面作戦とチカマウガ方面作戦に参戦し、その勇猛果敢な指揮で部下からの信頼も厚かったと伝えられます。しかし、ヴィックスバーグへの派遣任務は「最も不快で骨の折れる作戦」だったと述懐しています。

1863年9月20日、チカマウガの戦いにおいて、ヘルム率いる孤児旅団は北軍の激しい攻撃にさらされました。勇敢に戦い続けたヘルムでしたが、北軍の狙撃兵の銃弾が胸を貫き、致命傷を負いました。戦場で息を引き取る直前、彼は勝利の有無を問い、南軍の勝利を確認すると「勝利、勝利、勝利！」と叫んだと伝えられています。

ヘルムの死は、エイブラハム・リンカーンと妻メアリー・トッド・リンカーンに深い悲しみをもたらしました。特にメアリーは、義理の兄弟の死を悼むことすら憚られたと言います。未亡人となったエミリー・トッド・ヘルムは、後にホワイトハウスへの訪問を許されました。チカマウガの戦いにおけるヘルムの勇敢な戦いぶりは、多くの人々から称賛され、特に彼が率いた孤児旅団の兵士たちからは、愛国者かつ英雄として記憶されています。

ベンジャミン・ハーディン・ヘルムの生涯は、複雑な政治情勢と家族関係の中で、自らの信念を貫き通した人物の姿を今に伝えています。彼の死は、南北戦争の悲劇を象徴する出来事の一つとして、歴史に深く刻まれています。

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