ベントレーウッド

ベントレー・ウッド

ベントレー・ウッドは、イギリスのサセックス州ロウ・ウィールド地方に位置する、著名なモダニズム様式の住宅です。「ハントの家」という別名でも知られています。この建物は、ロシア出身の建築家セルゲイ・シャーマイエフによって設計され、サウス・ダウンズの美しい眺望を一望できる場所に建てられました。

計画と建設

シャーマイエフは、自身の家族が暮らすためのカントリーハウスを建設する目的で、1935年にベントレー・ファームの広大な敷地から約52ヘクタール（130エーカー）の土地を購入しました。建設地は、ハランド村に近接しており、ロンドンからイーストボーンへ向かうA22道路の近く、ルイスからは北東へ約20キロメートル（12マイル）ほどの距離にあります。しかし、当初、シャーマイエフが提出したモダニズム建築の建設計画は、その革新的なデザインが周囲の環境と調和しないとして、アックフィールド田園地方評議会によって一度は却下されました。それでも、粘り強い交渉と調査の結果、1937年初頭にようやく建設許可が下りることとなりました。

建築とデザイン

ベントレー・ウッドの主たる建物は、間口約20メートル（66フィート）、奥行き約10メートル（33フィート）の長方形のプランを持つ2階建ての構造です。屋根はフラットルーフが採用され、外壁は木材で覆われています。建物の北側（入口側）と南側（庭園側）に面する長い側面には、それぞれ6つのベイが設けられており、各ベイの間隔は約0.84メートル（2フィート9インチ）となっています。建物の北側ファサード沿いと、主棟の東側に位置するサービス棟の西側には、ペルゴラが配され、建物全体にアクセントを加えています。

南側には、1階に設けられたスライド式のドアを開放すると、家屋の側面に沿って設けられた一段高くなったテラスへと繋がります。このテラスは、1階の寝室からもアクセス可能で、さらにテラスの外側にはバルコニーも設けられています。庭園テラスの東端は南に向かって広がっており、著名な彫刻家ヘンリー・ムーアに制作を依頼した石の彫刻が設置されています。特に、彼の代表作の一つである《リカンベント 1938》（Reclining Figure 1938）は、テラスの端に設けられた台座のために制作されたものです。建物を囲む広大な庭園の設計は、ランドスケープデザイナーのクリストファー・タナードが手掛けました。

内部空間には、当時の最前線で活躍していた現代美術家たちの作品が数多く飾られていました。具体的には、ベン・ニコルソン、ジョン・パイパー、バーバラ・ヘップワースといったアーティストの作品が、空間を彩っていたとされています。

その後の歴史

ベントレー・ウッドは1938年に無事竣工を迎えましたが、翌1939年にシャーマイエフが破産したため、完成からわずか1年で売却されることとなりました。シャーマイエフ自身はその後、1940年にアメリカ合衆国へ移住しています。

新たな所有者となったのは、ウィリアム・エムズリー・カール卿でした。彼はベントレー・ウッドにいくつかの改築を施しています。特に、1階部分の増築を行い、さらに2階中央にあった以前は開放されていたロッジアのベイを囲い込むなどの変更を加えています。その後も、家は1979年、1999年と再び売却され、2002年には140万ポンドで市場に出された記録があります。

評価

ベントレー・ウッドは、完成当時の『建築家ジャーナル』誌において、「典型的なロールスロイス家」と形容され、その革新性と完成度の高さが称賛されました。現代においても、その洗練されたデザインと周辺環境との調和を目指した計画は高く評価されており、イギリスにおける最も影響力のある近代主義住宅の一つとして位置づけられています。ただし、その歴史的・建築的な重要性にもかかわらず、イギリスの重要指定建造物（Listed Building）としては指定されていません。

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