ベントレー・スピードシックス

スピードシックス：ベントレーの伝説的名車

ベントレー・スピードシックスは、1926年から1930年にかけて製造された、名門ベントレーが手がけたスポーツカー、ひいてはレーシングカーです。6½リットルエンジンの高性能バージョンとして開発され、その卓越した性能と数々のレースでの勝利によって、ベントレーの歴史に輝くモデルとなりました。

圧倒的なパワーと洗練されたデザイン

スピードシックスの心臓部は、6,597ccの水冷直列6気筒エンジンです。内径約100mm、行程約140mmという大きなボアとストロークを持つこのエンジンは、SU製ツインキャブレターとハイカムシャフトを装備し、初期型では最大出力160馬力を発揮しました。圧縮比5.1という、当時としては高い値も特徴です。最高速度は92mph（約148km/h）に達しました。

スタイリングは、伝統的なベントレーのデザインを踏襲しつつ、よりスポーティな要素が加えられています。ノーマルの6½リットルモデルのエンブレムが青であるのに対し、スピードシックスのエンブレムは緑色である点が、識別ポイントとなっています。

ロードカーとしての活躍

スピードシックスは、単なるレーシングカーとしてだけでなく、ロードカーとしても販売されました。ベントレー会長であったウルフ・バーナートも個人所有していました。オーナーの好みに合わせて様々なコーチビルダーによってボディが架装され、個性豊かな一台が数多く存在します。また、西オーストラリア州警察では、パトロールカーとして2台のサルーンボディのスピードシックスを配備していました。

更なる進化とレーシングシーンでの活躍

1930年以降のモデルでは、圧縮比が5.3に高められ、シングルポートブロックの採用により、最大出力は180馬力に向上しました。ホイールベースも延長され、バリエーションが拡大されました。

スピードシックスの真価は、レースシーンにおいて発揮されました。レーシングバージョンは、ホイールベースを短縮し、圧縮比を6.1に高めることで、最大出力200馬力を達成。さらに二重点火システムを採用することで、より高い信頼性と出力を実現しました。

「ベントレー・ボーイズ」と呼ばれる名ドライバーたちの手腕により、スピードシックスは数々のレースで輝かしい成績を収めました。特に、1929年と1930年のル・マン24時間レースでは総合優勝を果たし、ベントレーの強さを世界に知らしめました。1930年のル・マンでは、2号車が総合2位を獲得するなど、その性能の高さが証明されました。

スピードシックスの遺産

1930年までの生産期間中に、約182台のスピードシックスが製造されました。その数は多くありませんが、各車が数々のレースで活躍し、数々の伝説を残したことから、ベントレーの歴史において、非常に重要なモデルとなりました。その高い性能と洗練されたデザインは、現代においても多くのファンを魅了し続けています。スピードシックスは、まさにベントレーの黄金時代を象徴するモデルと言えるでしょう。

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