コーチビルダー

コーチビルダーとは

コーチビルダーは、馬車や自動車、バス、トラックなどの車両のボディを製造、架装する業者を指します。イギリス英語の「コーチ」(coach)は、ハンガリーの馬車製造の名所、コチに由来しています。このため、イギリスでは指定席の切符などに「Coach C」などと記載されることがあります。また、特定のルールがある「Quiet Coach」という車両もあり、騒音を避けるための指定席として利用されています。特に長距離移動用の旅客列車では、これが非常に重要な役割を果たします。

歴史的背景

昔は木製や金属製の車体を製造する技術が限られており、多くの企業はコーチビルダーとの契約によって、車両のボディを扱っていました。たとえば、フィッシャーボディ社は1910年代のキャデラックのクローズドボディを手掛けていました。また、イギリスの高級車ブランドであるジャガーも、かつてはコーチビルダー業務を行っていました。

自動車メーカーが車体製造技術を習得していく中で、オーダーメイドの車体架装の需要が裕福層に広がりました。たとえば、ブガッティ・タイプ57やキャデラック・V-16、フェラーリ・250などの名車は、シャシーとボディ分離の販売スタイルが一般化していきました。この時期、多くのコーチビルダーはピニンファリーナやジウジアーロなどの著名なデザイナーとコラボレーションを行い、高度なデザインと機能性を追求しました。

しかし、モノコック構造の登場により、オーダーメイドの車体架装が難しくなり、多くのコーチビルダーが自動車メーカーに吸収され、消滅していきました。現在のコーチビルダーは、大手自動車メーカーと契約し、自動車の組立や少量生産車種の製造を行っています。

日本におけるコーチビルダーの現状

日本では、かつて富士重工業や北村製作所、西日本車体工業などがバス車両のコーチビルダーとして存在しました。しかし、2011年には西日本車体工業が解散し、現在は新たにバス車体を架装するコーチビルダーが存在しません。岩戸工業や東京特殊車体などは既成品を二次架装し、改造する事業を行っていますが、一般的にはコーチビルダーとは呼ばれません。

乗用車の分野においては、光岡自動車やトミーカイラ、オーテックジャパン、京成自動車工業などがコーチビルダーとしての業務を行っていましたが、光岡自動車は現在、自動車メーカーとしての位置付けが強いため、コーチビルダーに分類されないこともあります。

特殊車両の分野では、今でも多くのコーチビルダーが車体を製作しており、例えば日本フルハーフやデザインラインなどがあります。消防車やクレーンなど特装車に関しては、艤装や架装メーカーと区別されるのが一般的です。

まとめ

コーチビルダーは車両製造において重要な役割を果たしてきましたが、時代の変遷とともにその姿は変わり続けています。現在の日本では、専業のコーチビルダーは減少しつつありますが、特殊車両など特定のニーズには応える存在が依然として存在しています。

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