ベントレー・3リットル

ベントレー3リットル：英国が生んだ伝説の名車

1921年から1926年にかけて、ベントレーモータースによって製造されたベントレー3リットルは、同社初の量産車として自動車史にその名を刻むモデルです。ウォルター・オーウェン・ベントレーの情熱が凝縮されたこの車は、高い性能と洗練されたデザインで、瞬く間に人気を博しました。

開発とメカニズム

この車の開発には、1912年製のグランプリプジョーと1914年製のグランプリメルセデスが参考とされました。特にメルセデスからの影響は大きく、メカニズム面にはその遺伝子が色濃く反映されています。EXP1、EXP2、EXP3と続く試作車の改良を経て、1921年に量産が始まりました。

心臓部であるエンジンは、内径約80mm、行程約149mmの水冷直列4気筒。排気量は2994cc、圧縮比4.3というスペックを持ち、鋳鉄製のシリンダーヘッドとブロック、アルミニウム製のクランクケースを組み合わせることで、70hpという当時としては十分な出力を実現しました。トランスミッションは4速マニュアルで、クロスレシオとワイドレシオの2種類が用意されていました。

シャシは、伝統的な鍛造ラダーフレームに半楕円リーフスプリングのサスペンションという構成です。リアアクスルケースがリーフスプリングの上に置かれている点や、リアブレーキのみながらフットとハンドの2系統のブレーキが備わっている点が特徴的でした。ホイールベースは約2984.5mm、最高速度は約129km/hを誇りました。ノーマルモデルのエンブレムは青色で、生産台数はスピードモデルとスーパースポーツモデルを含め、1622台に及びました。6気筒版の6½リットル、そして後継モデルの4½リットルへと、ベントレーの歴史は続いていきます。

スピードモデルとスーパースポーツモデル

1923年には、性能向上を図った「スピード」モデルが登場しました。SU製キャブレターの採用と圧縮比の向上（5.3）により、出力は80hpにアップ。さらに、4輪ブレーキの装備やサーモスタットの搭載など、改良が施されました。外観上はノーマルモデルとほとんど変わりませんが、赤いエンブレムで識別できました。1926年からは、従来のスーパースポーツモデルのスペックを継承したモデルに「スピード」の名前が用いられるようになりました。スピードモデルの生産台数は513台でした。

1925年に登場した「スーパースポーツ」モデルは、圧縮比5.6、出力85hpという高い性能を誇りました。緑色のエンブレムがその証です。1926年には、さらに圧縮比が6に、出力が90hpに向上しました。スーパースポーツモデルの生産台数は18台と、希少な存在です。

ル・マン24時間レースでの活躍

ベントレー3リットルは、レースにおいてもその実力を証明しました。1922年にはワークスチーム「ベントレーボーイズ」が結成され、ル・マン24時間レースに参戦。1923年のレースでは、燃料タンクの故障というアクシデントに見舞われながらも4位入賞を果たし、平均時速107.328km/hという当時のコースレコードを記録しました。

1924年には、ついに総合優勝を達成。そして1927年、スーパースポーツモデルで再び優勝の栄冠を手にしました。この年には多くの車両が事故でリタイヤする中、シャシが歪んだ状態のまま走り続け、奇跡的な優勝を果たしています。

まとめ

ベントレー3リットルは、優れたメカニズムと高い走行性能、そしてル・マンでの輝かしい戦績によって、自動車史に名を残す一台となりました。その歴史的価値と魅力は、現代においても色あせることがありません。この車は、ベントレーというブランドの礎を築いただけでなく、自動車の歴史に大きな足跡を残した、まさに伝説の名車と言えるでしょう。

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