ベントレー・Tシリーズ

ベントレーTシリーズ：ロールスロイスの影に隠れた高級車の系譜

ベントレーTシリーズは、1965年から1980年にかけて製造された高級乗用車です。ロールスロイス・シルヴァークラウドの後継モデルであるロールスロイス・シルヴァーシャドウの登場と同時に、ベントレーブランドはTシリーズへと移行しました。しかし、近代的なシャシと先進的なデザインで人気を博したシルヴァーシャドウとは対照的に、Tシリーズはマイナーモデルとして、比較的少量の生産にとどまりました。

ベントレーT1：控えめなデビューとコーチビルトボディの低人気

T1は、ロールスロイス・シルヴァーシャドウの登場と歩調を合わせるようにして発売されました。それまでベントレーはロールスロイスよりも生産台数が多い状況でしたが、Tシリーズは状況を一変させます。シルヴァーシャドウは24,000台を超える人気を博したのに対し、Tシリーズは、その人気に遠く及ばず、生産台数は限定的でした。

コーチビルトボディも設定されていましたが、近代的な標準ボディとのデザイン的な差が少なく、価格だけが極端に高くなってしまったため、ほとんど注文はありませんでした。生産台数はショートホイールベースのサルーンが1,703台、ロングホイールベースのサルーンはわずか9台という結果でした。H・J・ミュリナー・パークウォード製では2ドアサルーンが98台、ドロップヘッドクーペが41台、ジェームズ・ヤング製2ドアサルーンは15台が生産されました。さらに、ピニンファリーナが1台の2ドアサルーンを製造しましたが、これは事実上クーペであり、後のロールスロイス・カマルグの原型となりました。1971年3月には、H・J・ミュリナー・パークウォード製の2ドアサルーンとドロップヘッドクーペは、コーニッシュとして独立した車種として扱われるようになりました。

ベントレーT2：改良とモデルチェンジ

1977年春、Tシリーズは改良を加え、T2へと進化しました。主な変更点としては、パワーステアリングシステムの採用、大型バンパーとスポイラーの標準装備、室内デザインの刷新、そしてロールスロイス・カマルグと共通のエアコンの標準装備などが挙げられます。T2ではコーチビルトボディは製造されませんでした。そして1980年、ロールスロイス・シルヴァーシャドウがシルヴァースピリットへとモデルチェンジしたのに伴い、Tシリーズはミュルザンヌへとバトンタッチしました。

Tシリーズの遺産

ベントレーTシリーズは、生産台数が少なく、ロールスロイスの影に隠れた存在ではありましたが、その歴史はベントレーの歴史において重要な役割を果たしました。特にTシリーズの設計や技術、デザインの一部は後のモデルにも継承され、ベントレーの進化に貢献しました。少量生産という希少性から、現在ではコレクターズアイテムとして高い価値を持つものとなっています。Tシリーズは、ベントレーの歴史の中で、控えめながらも重要な役割を担ったモデルと言えるでしょう。

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