ベント・ラーセン

ベント・ラーセン（Bent Larsen）は、1935年3月4日にデンマークのコペンハーゲンで生まれた、世界的に知られるチェスプレーヤーです。彼は若くしてその才能を開花させ、わずか21歳でチェスの最高位であるグランドマスターの称号を獲得しました。

1970年代の初期にかけて、ラーセンはチェス界の頂点の一角を占める実力者として認知されていました。特に、アメリカの天才ボビー・フィッシャーと並び、当時の「自由主義圏」、すなわち共産圏以外の国々におけるナンバーワンプレーヤーの地位を競い合う存在でした。

当時の世界的なチェスシーンでは、プロフェッショナルな制度が主に共産圏諸国で整備されており、それ以外の地域ではプロとして生計を立てることが難しい時代でした。そのような状況下で、ラーセンはフィッシャーと同様に、自由主義圏を代表する数少ないプロフェッショナルプレーヤーとして、世界中にその名を知られていました。

ラーセンのキャリアにおける特筆すべき出来事の一つに、1970年にユーゴスラビア（当時）のベオグラードで開催された「ソ連チーム対世界チーム戦」があります。この歴史的な対抗戦において、彼は世界チームのキャプテンという大役を務め、ソ連チームのキャプテンであった当時の世界チャンピオン、ボリス・スパスキーとトップボードで対戦しました。両者の対局は1勝1敗1引き分けという互角の結果に終わりました。なお、4局目にはスパスキーに代わり補欠のレオニード・シュタインがラーセンと対局しました。この大会でラーセンが喫した2局目の敗北は、彼の名を冠したオープニングである「ラーセン・オープニング」の代表的なゲームとして、多くのチェス専門書で分析・紹介されています。

国際的な活動も活発に行ったラーセンは、1973年にはフィリピンのマニラで開催されたトーナメントへの参加後、日本を訪問しました。東京では、在日外国人を含む49人の参加者に対し、約4時間半にわたる同時対局を行いました。この対局では、45勝3敗1引き分けという素晴らしい成績を残し、日本のチェスファンにもその妙技を披露しました。

晩年はアルゼンチンのブエノスアイレスで過ごしたラーセンは、2010年9月9日、同地にて75歳で惜しまれつつ急逝しました。彼の革新的なスタイルと、自由主義圏におけるチェス普及への貢献は、今なお多くの人々に記憶されています。

もう一度検索