ベン・ダン

ベン・ダン：米国における日本風漫画の開拓者

ベン・ダン氏（1963年生まれ）は、台湾にルーツを持つアメリカ人漫画家です。特に、米国において日本漫画（マンガ）の表現スタイルを積極的に取り入れた作品を生み出し、後の世代に大きな影響を与えたことで知られています。

ダン氏は1963年に台湾で生を受けましたが、幼少期に家族と共にアメリカ合衆国へと移住し、テキサス州サン・アントニオやケンタッキー州ルイヴィルで少年時代を過ごしました。漫画家としてのキャリアを志す上で決定的な転機となったのは、1977年に台湾を再訪した時の出来事です。当時、台湾には日本語版を翻訳した海賊版の日本漫画が流通しており、ダン氏はそれに触れる機会を得ました。内容は理解できずとも、その独自の絵柄や表現技法、特にアメリカンコミックとは異なる1色刷りや表現の自由さに強い印象を受けたと語っています。

当初、ダン氏はアメリカで日本の漫画を正規に出版することを模索しましたが、当時台湾で見られたものが海賊版である現実を知り、その構想を断念しました。代わりに彼が着想を得たのが、「日本の漫画風のコミックを自ら制作し、アメリカで発表する」というものでした。これは、既存のアメリカンコミックとは一線を画す新たなジャンルを切り開く試みでした。

このアイデアを実現するため、ダン氏は1985年に自らの出版社「アンタークティック・プレス」を設立しました。そして、アメリカ人作家による日本風コミックを集めたアンソロジー雑誌「マンガジン」を創刊し、この新たな形式の作品を紹介する場を設けました。

彼の最もよく知られた代表作「ニンジャ・ハイスクール」は、1987年に連載が開始されました。この作品は、日本の人気アニメ・漫画である『プロジェクトA子』や『うる星やつら』から強い影響を受けており、その初期には毎号5000部を売り上げるほどの人気を博しました。この連載は現在も続いており、長期にわたる彼の活動の核となっています。

しかし、1990年代以降、日本漫画の英語版が正規に多数出版され、広く読まれるようになるにつれて、ダン氏の作品は「日本漫画の模倣である」という批判に晒される機会も増えました。彼自身が「ビーンダン」（二番煎じの意）と揶揄されることもあったといいます。

新たな展開として、2002年には大手出版社であるマーベル・コミックスの企画に参加し、「マーヴェルのヒーローズを日本の漫画風に描く」というコンセプトのもと、『マーベル・マンガヴァース』シリーズを手がけました。このシリーズの商業的な成功は限定的でしたが、彼の知名度を向上させる一助となり、その後はライバルであるDCコミックスの関連作品にも携わるなど、活動の幅を広げました。

ベン・ダン氏は、まだ日本漫画がアメリカで一般的でなかった時代に、そのスタイルを取り入れた作品を精力的に制作・発表することで、後の世代のアメリカ人漫画家や読者に向けて、日本漫画の可能性を示した功績は大きいと言えるでしょう。

主な作品

Heaven Sent
The Agents
Mighty Tiny
Ninja High School
Warrior Nun Areala
Marvel Mangaverse
Voltron
Gigantor（鉄人28号のリメイク）

もう一度検索