ペガサス橋

ペガサス橋：ノルマンディー上陸作戦の足掛かり

1934年に建造されたペガサス橋は、フランスのカーン運河に架かる跳開橋です。ベヌーヴィル橋とも呼ばれるこの橋は、第二次世界大戦中の1944年6月6日、ノルマンディー上陸作戦において、イギリス軍空挺部隊にとって極めて重要な目標となりました。

デッドスティック作戦とペガサス橋

ペガサス橋は、オルヌ川にかかるホルサ橋とともに、トンガ作戦の一部であるデッドスティック作戦の主要目標でした。ジョン・ハワード少佐率いるイギリス軍第6空挺師団のグライダー部隊は、ドーセット州タラント・ラシュトン空軍基地からペガサス橋を目指して出発しました。この作戦の目的は、ドイツ軍の増援部隊がソード・ビーチ東側へ到達するのを阻止することでした。

奇襲作戦の成功

6機のグライダーでペガサス橋へ接近したイギリス軍は、午前0時16分、目標から僅か数十ヤードの地点に着陸。ドイツ軍守備隊を完全に奇襲し、わずか10分足らずで橋を制圧することに成功しました。この迅速な行動は、ノルマンディー上陸作戦における戦況を大きく左右することとなります。

橋の確保と犠牲

ペガサス橋の奪取は、成功裏に終わりましたが、2名の兵士が戦死しています。デン・ブラザリッジ中尉は橋を渡っている最中に頸部を撃たれ、フレッド・グリーンハル下級伍長はグライダー着陸時の事故で亡くなりました。また、1機のグライダーは誤って離脱し、7マイル離れた場所に着陸しましたが、乗員はドイツ軍の前線を突破し、イギリス軍と合流しました。

増援と戦後の状況

ペガサス橋確保後、3時間後に到着した第7パラシュート大隊などの増援部隊により、橋の防衛体制は強化されました。後に映画『史上最大の作戦』でハワード少佐を演じることになるリチャード・トッド大尉も増援部隊の一員でした。

1944年6月26日、イギリス軍はペガサス橋への感謝の意を込めて、橋の名をペガサス橋と改名しました。この名称は、イギリス軍空挺部隊のエンブレムであるペガサスに由来しています。

ペガサス橋の構造

ペガサス橋は、シェルツァー・ローリング・リフト・バスキュール橋という種類の跳開橋です。このタイプの橋は、橋梁全体を回転させるのではなく、踏み板部分を巻き上げることで開閉するため、水路の通航幅を広く確保できるのが特徴です。1994年には新しい橋が架け替えられましたが、旧橋はペガサス記念館に移設され、現在も保存されています。

ペガサス記念館

ペガサス記念館は2000年6月4日に開館しました。この記念館には、旧ペガサス橋のほかに、カフェや関連グッズを販売する売店があります。カフェ・ゴンドレは、Dデイ当時、この地域に住んでいたアルレット・ゴンドレ氏によって経営されています。しかし、カフェ・ゴンドレがDデイで最初に解放された家屋であったという説には異論もあります。

参考文献

ペガサス橋とノルマンディー上陸作戦に関する多くの書籍が出版されています。以下に例を挙げます。

Ambrose, Stephen (1985) Pegasus Bridge 6 June 1944.
Barber, Neil (2009). The Pegasus and Orne Bridges.
Beevor, Antony (2009). D-Day: The Battle for Normandy.
Howard, John; Bates, Penny (2006). The Private Papers of Major John Howard DSO.
Shannon, Kevin; Wright, Stephen (2001). One Night in June.
Shilleto, Carl (2010). Pegasus Bridge and Horsa Bridge.

これらの文献は、ペガサス橋の戦い、そしてノルマンディー上陸作戦の詳細な理解に役立ちます。ペガサス橋は、ノルマンディー上陸作戦におけるイギリス軍の成功と犠牲を象徴する重要な場所であり、歴史的意義は計り知れません。現在もその歴史は語り継がれ、多くの人々が訪れる観光地となっています。

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