ペリカン (企業)

ペリカン (Pelikan)

ペリカンは、スイスに本社を置く文房具、オフィス用品メーカーです。筆記具、絵の具や絵筆、チョーク、糊といった教育用のアート、クラフト資材の他、インクジェットプリンター用カートリッジ、パソコンやFAX用のインクリボンなどの印刷資材も扱っています。ペリカンのブランドはドイツに起源があり、現在も売上の半分程度をドイツ国内で稼いでいます。

沿革

1838年にハノーファーにて、ドイツ人化学者カール・ホルネマン（1811年-1896年）が絵具とインクの工場を設立したのがペリカンの起源です。
1863年には、ギュンター･ワーグナーが経営に参加し、近隣諸国への販売を拡大しました。創業後、インクメーカーとして発展し、1878年にはペリカン製品の品質を保証するために、当時ヨーロッパでは珍しかった商標を登録しました。商標のモチーフとなったペリカンの親子像は、ヨーロッパでは古来より母性愛の象徴とされており、またギュンター･ワーグナー家の家紋でもありました。
1929年には筆記具の製造を開始し、独自のインク吸入方式が人気を博しました。現在でも人気の高い緑縞のデザインは筆記具製造当初からのものです。1978年に有限会社から株式会社に転換しました。その後もオフィス、教育現場用の文房具などに事業を拡大し、1980年代にはプリンターやプロジェクター、玩具、ゲーム、化粧品部門に進出しました。

しかし、1980年代に事業が行き詰まり、スイス企業が買収しました。90年代にはスイス企業の株式の過半をマレーシア企業が握り、マレーシア資本となりました。そして、2023年には、マレーシアのペリカン・インターナショナル・コーポレーション（PICB）は、文房具の生産・販売を手掛ける傘下のドイツ企業をフランスの同業のホールダムに1億3600万ユーロ（約214億円）で売却すると発表しました。この売却により、再び経営権が欧州企業に移ることになります。

主要製品

ペリカンは、万年筆を始めとする筆記具が特に有名です。以下に主な製品を紹介します。

万年筆

トレド
925シルバーの軸全体に24Kで装飾･彫金が施されているバーメイル仕様の万年筆です。最高級品の一つで、サイズ違いでM900とM700があります。尻軸にキャップを挿した状態での筆記バランスには定評があります。

スーベレーンシリーズ
ペリカン社を代表するロングセラー製品で、世界中の作家から一般人に至るまで多くの人々に愛用されています。万年筆のスタンダードともいえるモデルです。スーベレーンはドイツ語で「すぐれもの」を意味します。サイズ違いで大きい順にM1000、M800、M600、M400などがあります。スーベレーンの縞軸は、プレキシグラスの透明板と色板を何枚も重ねて圧縮し、模様になった断面を薄くスライスして、それを丸めて繋いで形成します。このようにして生まれる一本一本の縞模様は、すべて微妙に異なります。M800緑縞モデルは、1997年に世界の万年筆人気投票でペン･オブ･ザ･イヤーを獲得しています。2023年には、縞が透明から黒へ仕様が変わっています。（M300は廃盤）

トラディショナルシリーズ
軸に金属を使用することで程よい重さと質感を出している万年筆です。かつては複数のモデルがありましたが、現行は1モデルのみです。

クラシックシリーズ
廉価版のシリーズで、プラスチック部品を多用し軽量に作られています。見た目はトラディショナルシリーズに似ています。黒と白のシリーズや特別生産品（カフェクリーム、コニャック、デモンストレーター:透明モデル、太字のみの蛍光ペン仕様のイエローデモンストレーター、シャイニーグリーンなど）が存在します。全てのモデルが吸入式でしたが、一部でカートリッジ式も発売されています。

ペリカーノ
カートリッジ式インクを使用するスクール用万年筆です。ニブはステンレス製です。ペリカーノ（ニブサイズM/F）と初心者用のペリカーノ・ジュニア（ニブサイズA）がラインナップされています。（現行はジュニアのみです。）

ダクタス
ブラス製ボディとフラットなペン先、カートリッジ式を採用したモダンなモデルの万年筆です。

レベルペン
通常の3倍のインクを補充可能で長時間筆記が可能な万年筆です。専用インク壺を使い、尻軸から直接インクを注入します。現在は販売していません。

世界の都市シリーズ
限定生産品の万年筆で、M600がベースとなっています。

世界の史跡シリーズ
限定生産品の万年筆で、M600がベースとなっています。

世界の七不思議シリーズ
限定生産品の万年筆で、M1000がベースとなっています。

ペンケース、インクなど

レザーシリーズ
レザーペンケースなどがあり、そのしっかりした作りと、リーズナブルな価格から人気が高いです。

ボトルインク
リーズナブルな価格の4001シリーズと、1年ごとに限定色が販売される、高価なエーデルシュタインの2種類があります。エーデルシュタインとは、ドイツ語で宝石という意味です。

備考

ペリカンの万年筆のインク補充方法は、大部分の商品で回転吸入式を採用していますが、近年はカートリッジ式も増えつつあります。
東京の万年筆専門店フルハルターで調整されたスーベレーンM1000およびM800の3Bペン先は森山モデルと呼ばれています。
商品の変更や生産終了が頻繁に行われるため、カタログに掲載されている商品が購入できなくなることがあります。コレクター向けの限定万年筆を多く発表することで知られており、限定品は伊東屋・丸善日本橋店・書斎館などで多く取り扱っています。

脚注

外部リンク

* Pelikan 公式ホームページ（英語）

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