ペルシアのシビュラ

ペルシアのシビュラは、古代ギリシア・ローマ神話に登場する、アポロンの神託を告げる巫女、シビュラの一人です。シビュラとは本来固有名詞でしたが、早い時期から複数のシビュラが各地に存在したと考えられています。

シビュラの起源と変遷

3世紀から4世紀頃の初期キリスト教の著述家ラクタンティウスが引用した古代ローマの学者ウァッロは、様々な地域に10人のシビュラが存在したと述べています。ウァッロは、ペルシアのシビュラを最初に挙げ、ニカノールという人物がアレクサンドロス大王の歴史を記した際に言及したとしました。他のシビュラとしては、リビア、デルポイ、キンメリア、エリュトライ、サモス、クーマエ、ヘレースポントス、プリュギア、ティーブルのシビュラが挙げられます。

ペルシアのシビュラの異説

ペルシアのシビュラについては、その出身や呼び名について多くの異説が存在します。旅行家パウサニアスは、オリエント世界にシビュラがいたという伝説に触れ、デルポイやクーマエのシビュラの後に、ヘブライ人の中にシビュラが現れたとしました。彼女はベーロソスとエリュマンテーの娘で、サッペーという名前であったとされています。しかし、バビロン出身やエジプト出身とする説も存在しました。

スーダ辞典における記述

10世紀にまとめられた辞典『スーダ』では、カルデアのシビュラの項目で、いくつかの別名が挙げられ、ヘブライ人のシビュラ、あるいはペルシアのシビュラとも呼ばれると記述されています。『スーダ』によれば、カルデアのシビュラは旧約聖書に登場するノアの末裔であり、名をサムベテといい、24冊に及ぶ著作はあらゆる人種と地域を網羅し、アレクサンドロス大王やイエス・キリストについて数多くの予言を残したとされています。

シビュラの役割と重要性

シビュラは古代世界において、神託を伝える重要な存在でした。特に、ペルシアのシビュラは、その出自や名前の異説の多さからもわかるように、複雑な歴史的背景を持つとされています。彼女たちの予言は、古代の人々にとって大きな影響力を持っており、政治や宗教においても重要な役割を果たしていました。

参考文献

パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎（1991年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

ペルシアのシビュラの物語は、古代の信仰や文化を理解するための重要な手がかりとなります。彼女たちの伝説は、時を超えて、現代に生きる私たちにも多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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