ペルジディーン・ゲンデン

ペルジディーン・ゲンデン：激動のモンゴルを駆け抜けた政治家

ペルジディーン・ゲンデン（1892年/1895年 - 1937年）は、20世紀前半のモンゴル人民共和国において、国家小会議幹部会議長（国家元首）および首相という要職を歴任した政治家です。彼は、ソ連からの様々な圧力に抵抗し、モンゴルの独自性を守ろうとした人物として知られています。

生涯

ゲンデンは、現在のウブルハンガイ県で極貧の遊牧民の家庭に生まれました。1924年11月29日に国家小会議幹部会議長に就任し、1932年7月2日には首相に任命されました。首相として、彼はソ連の指導者スターリンからの度重なる圧力、特にラマ僧の一掃やソ蒙相互援助議定書の成文化などに断固として抵抗しました。彼の抵抗は、モンゴルの宗教と文化を守ろうとする強い意志の表れでした。

しかし、ゲンデンの抵抗はスターリンの不興を買い、1936年3月に首相の座を追われることになります。翌年の4月には療養のためソ連へ向かいましたが、その年の夏、滞在先のクリミアの温泉地フォロスで逮捕され、1937年11月26日に反革命主義者、日本帝国主義のスパイという不当な罪を着せられ、モスクワで処刑されました。

ソ連においては1956年に名誉回復がなされましたが、モンゴル本国での名誉回復は、民主化後の1990年まで待たなければなりませんでした。ゲンデンは、スターリンによるモンゴル大粛清の最初の犠牲者の一人として数えられています。

人物像

ゲンデンは、マルクス・レーニン主義を信奉する一方で、熱心な仏教徒でもありました。1924年には、「世界で最も優れた知性を持つ者」としてウラジーミル・レーニンと釈迦の名前を挙げています。彼の思想は、ラマ僧に対する穏健な政策として具体化されました。

また、ゲンデンは酒癖が悪く、1935年の会食中には、ラマ僧の一掃を主張するスターリンに激怒し、平手打ちを食らわせ、スターリンのトレードマークであったパイプを破壊したという逸話が残っています。このエピソードはモンゴル国内では非常に有名で、ゲンデンを「スターリン・ソビエト社会帝国主義に対する抵抗者」として評価する際に、しばしば引用されます。

家族と記念

ゲンデンの娘であるG.ツェレンドゥラムは、1993年にウランバートル市内の自宅において政治弾圧犠牲者記念博物館を設立しました。この博物館は、ゲンデンの遺志を継ぎ、モンゴルの暗い歴史を後世に伝えるための重要な施設となっています。

参考文献

田中克彦『モンゴル――民族と自由』岩波同時代ライブラリー、1992年
田中克彦『ノモンハン戦争－モンゴルと満洲国』岩波新書、2009年

ペルジディーン・ゲンデンは、激動の時代にモンゴルの独立と文化を守ろうと奮闘した愛国者でした。彼の生涯は、モンゴルの近代史における重要な教訓として、今も語り継がれています。

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