ペルフルオロオクタンスルホン酸

ペルフルオロオクタンスルホン酸（PFOS）の解説

ペルフルオロオクタンスルホン酸（PFOS）は、炭素鎖にフッ素原子が結合した特殊な構造を持つスルホン酸の一種です。その塩であるペルフルオロオクタンスルホン酸塩（PFOS）は、強力な界面活性剤として様々な製品に使用されてきました。

PFOSの性質と合成

PFOSは水への溶解度は低いものの、有機溶媒には溶けやすいという特性を持っています。また、非常に低い蒸気圧と高い界面活性を持ち、水の表面張力を著しく低下させることができます。この高い界面活性が、PFOSの様々な用途に繋がっていました。PFOSは、オクタンスルホン酸フルオリドを電解フッ素化することで合成されます。

重要な特徴として、PFOSは自然環境においてほとんど分解されません。そのため、『永遠の化学物質』とも呼ばれ、環境への残留性が大きな問題となっています。

PFOSの用途

PFOSの高い界面活性、低屈折率、高い起泡性といった特性から、以下のような用途で広く使用されていました。

めっき液のミスト防止剤: めっき工程で発生するミストの抑制に効果を発揮しました。
塗料のレベリング剤: 塗膜の平滑化、均一性を向上させました。
消火剤: 水成膜泡消火薬剤や中性強化消火液などに使用され、消火効果を高めました。
殺虫剤: 一部の殺虫剤に配合されていました。
* 半導体リソグラフィの反射防止剤: 半導体製造工程において、光の反射を抑制する役割を果たしました。

しばしば誤解されますが、PFOSは撥水撥油剤ではありません。撥水撥油剤は、フッ素系モノマーの重合によって作られるポリマーであり、PFOS自身は親水性・親油性が高いため、撥水・撥油効果とは逆の性質を示します。

環境汚染と健康への影響

PFOSは環境中へ蓄積し、生態系や人体に悪影響を及ぼすことが懸念されています。2000年代初頭、3M社がPFOSの世界的な環境汚染を認め、製造を中止しました。OECDによる調査では、PFOSが環境中において持続性が高く、生物蓄積性があり、哺乳類に対して毒性を示すことが確認されています。

動物実験では、PFOSががん、胎児発育遅延、内分泌かく乱、周産期死亡などの原因となることが示されています。また、PFOSへの曝露は、免疫系の機能低下、甲状腺ホルモン分泌の変動、コレステロール上昇、不妊、ADHDのリスク増加など、様々な健康影響と関連付けられています。

ヒトに対しても、血液中のPFOS濃度と様々な健康問題の関連性が報告されています。職業的に曝露する人の血液中には高濃度のPFOSが検出され、一般の人でも一定の濃度が検出されています。

PFOSの規制

PFOSの環境汚染と健康へのリスクが明らかになったことを受け、世界各国で規制が進められています。ストックホルム条約に掲載され、製造・使用が制限されるだけでなく、日本、欧州、アメリカなど多くの国でPFOSの製造、輸入が規制もしくは事実上禁止されています。 しかしながら、一部地域では未だにPFOSを含む消火剤などが使用されていたり、土壌や水質への汚染が問題となっています。

まとめ

PFOSは強力な界面活性剤として有用な物質でしたが、その環境への残留性と人体への悪影響から、世界的に規制が進められています。今後もPFOSの環境モニタリング、汚染対策、代替物質の開発が重要な課題となります。

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