ペータル1世 (セルビア王)

ペータル1世（クラリ・ペータル1世・カラジョルジェヴィッチ、1844年6月29日 - 1921年8月16日）は、セルビア王国の国王（在位:1903年 - 1918年）であり、セルビア人・クロアチア人・スロヴェニア人王国の初代国王として、激動の時代を生きました。

幼少時代と国外生活

ベオグラードで生まれたペータルは、父であるセルビア公アレクサンダル・カラジョルジェヴィッチの退位に伴い、幼少期を国外で過ごしました。主にフランスで教育を受け、フランス陸軍にも入隊するなど、西欧的な教養を身につけました。1883年にはモンテネグロ王ニコラ1世の王女リュビツァ（ゾルカ）と結婚し、5人の子供をもうけましたが、そのうち2人は夭折しています。

セルビア王即位

1903年、セルビアで軍事クーデターが発生し、アレクサンダル1世（アレクサンダル・オブレノヴィッチ5世）とその王妃が暗殺されると、ペータルはセルビアに帰国し、同年6月11日にセルビア王に戴冠しました。親オーストリア＝ハンガリー政策を採っていたアレクサンダルに対し、親ロシアのペータルは南スラヴ民族の統一を志向し、国民の期待を集めました。

治世と第一次世界大戦

西欧で教育を受けたペータルは、西欧型の立憲君主制をセルビアに導入しようと試み、『自由論』をセルビア・クロアチア語に翻訳するなど、自由化政策を推進しました。しかし、バルカン戦争中に病に倒れ、息子の皇太子アレクサンダルに権限を委譲せざるを得なくなりました。

第一次世界大戦中、ペータルは高齢ながらも軍隊を視察するために塹壕を訪問するなど国民を鼓舞しました。1915年には、自らライフルを手に敵兵を撃つという逸話も残っています。1918年12月1日、セルビア人・クロアチア人・スロヴェニア人王国の国王となったことが、彼が公の場に姿を現した最後の機会となりました。その後、1921年にベオグラードで77歳で崩御しました。

王位継承と遺産

ペータル1世の長男であるジョルジェ王子は当初、王位継承者でしたが、使用人を殺害する事件を起こし、1909年に王位継承権を放棄。弟のアレクサンダルが後を継ぐことになりました。

ペータル1世は、その謙虚な人柄と軍事的背景から、国民に長く記憶されています。彼の治世はセルビアの近代化に大きく貢献し、現在でもセルビアで最も人気のある指導者の一人として尊敬されています。子供たちは成長後、ヨーロッパの歴史において重要な役割を果たしました。アレクサンダル1世はユーゴスラビア人としての民族的アイデンティティを育成し、娘のイェレナ王女はロシアの皇族と結婚し、ロシア帝室にも影響を与えました。

2018年には、ペータル1世の生涯を描いたセルビア・ギリシャ合作の映画『セルビア・クライシス』が公開され、彼の功績が改めて注目を集めています。

もう一度検索