ユーゴスラビア人

ユーゴスラビア人とは

ユーゴスラビア人とは、かつて存在したユーゴスラビアという国家の国民を指す言葉です。この国は「南スラヴ人の国」という意味を持ち、多[[民族国家]]でした。そのため、ユーゴスラビアという国家において、統一的な民族概念、アイデンティティとして「ユーゴスラビア人」という概念が提唱されました。

概要

「ユーゴスラビア人」というカテゴリーは、1953年にユーゴスラビア連邦人民共和国で行われた2回目の人口調査から導入されました。これは、民族的帰属や宗教的帰属を問う項目に関連しています。

導入の背景には、大きく分けて2つの要因があります。

1. 建国の思想的基盤である「南スラヴの統一」という観点から、ユーゴスラビア人意識が国民に浸透することが理想とされた。
2. ボスニア・ヘルツェゴビナを中心とするムスリム人の集団意識の扱いの変遷があった。

ユーゴスラビアでは、国勢調査における民族の申告は自己申告制であり、本来の民族と異なる申告をしても問題視されない土壌がありました。ユーゴスラビア崩壊後も、ユーゴスラビア人であると申告する人々が存在します。

同様に多[[民族国家]]において想像された民族としては、チェコスロバキア人、ソ連人、中華[[民族]]などが挙げられます。ユーゴスラビアにおいては、70年以上の歴史の中で民族間の混血が進み、両親の民族が異なるため、自らの民族をユーゴスラビア人としか規定できない人々も多く存在しました。

地域的な特徴

民族間の混血が進んだ地域、具体的にはボスニア・ヘルツェゴビナやセルビアのヴォイヴォディナ自治州などでユーゴスラビア人と申告する人が多い傾向がありました。また、地方からの流入者が多いベオグラードなどの都市部でも同様の傾向が見られました。さらに、ある民族が多数派である地域において、少数派の民族が摩擦を避けるためにユーゴスラビア人と申告するケースもありました。

国勢調査におけるユーゴスラビア人

自らの民族をユーゴスラビア人として申告した人の数は、1971年の国勢調査では273,077人（全人口の1.3%）、1981年の国勢調査では1,216,463人（全人口の5.4%）と増加しました。1981年は、ユーゴスラビア人が最も多かった時期であり、その後ユーゴスラビア解体の動きが進むにつれて、ユーゴスラビア人と申告する人の数は減少していきました。それでも、1991年に行われたユーゴスラビア最後の国勢調査では、ボスニア・ヘルツェゴビナで239,777人がユーゴスラビア人として申告しています。

ユーゴスラビア解体後

ユーゴスラビア解体後、旧ユーゴスラビア構成諸国家では2001年から2003年にかけて国勢調査が実施されました。2002年に実施されたセルビアの国勢調査では、80,721人が自らの民族をユーゴスラビア人として申告しています。

現在でもユーゴスラビア人として申告する人々の思想的背景は様々です。共産主義体制を支持する人、ユーゴスラビアを懐古する人、ユーゴスラビア紛争の反省から民族間の融和を願う人などがいます。また、両親の民族が異なるという理由でユーゴスラビア人として申告する人もいます。

関連項目

ソビエト民族
中華[[民族]]
エミール・クストリッツァ
ペータル1世 (セルビア王)
* イヴォ・アンドリッチ

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