ペーター・リーデル

ペーター・リーデル：グライダーパイロットと駐在武官の波乱の人生

ペーター・リーデル(1905年8月-1998年11月6日)は、ドイツを代表するグライダーパイロットであり、第二次世界大戦前にはナチスドイツの駐在武官を務めた、複雑な経歴を持つ人物です。彼の生涯は、グライダー競技での成功、国際的な活動、そしてナチス政権との関わりという、劇的な転換点に彩られています。

リーデルはザクセン＝アンハルト州で生まれました。幼少期は父の精神疾患により、叔父に育てられました。しかし、15歳という若さでグライダーへの情熱を抱き、自作のグライダーで競技会に参加するなど、並々ならぬ才能を示しました。持ち前の技術と熱意は、グライダー愛好家の慈善家カール・コッツェンベルクの目に留まり、ダルムシュタット工科大学への進学を支援されました。

工学を専攻したリーデルは卒業後、民間パイロットを目指しましたが、職を見つけることができず、ドイツ滑空機研究所で6年間研究に従事しました。同研究所でヴァルター・ゲオルギイのもとで研鑽を積む傍ら、グライダー競技会への参加を続け、1933年には229kmという長距離飛行の世界記録を樹立、同年にヒンデンブルク・カップを受賞するなど、輝かしい実績を残しました。さらに、1934年にはゲオルギイ、ハンナ・ライチュらとともに南米を訪れ、ブラジルやアルゼンチンでグライダー・スポーツの普及活動にも尽力しました。

その後、ルフトハンザ、コロンビア航空のパイロットを経て、1937年にはアメリカの国内グライダー大会に参加。アメリカ滞在中に、ドイツの駐在武官としてワシントンD.C.勤務を要請され、アメリカの航空活動に関する情報の収集に従事しました。しかし、アメリカ合衆国が第二次世界大戦に参戦すると、外交官交換でドイツへ帰国。一時、ハインケル社でエンジニアとして働いた後、スウェーデン駐在の外交官に任命されました。

スウェーデン滞在中、アメリカやソ連の新聞を通してナチスの残虐行為を知り、衝撃を受けました。アメリカの外交官と接触したことが原因でベルリンに召還命令が出されたため、リーデルはスウェーデンに潜伏。戦後、不法滞在で検挙されたものの、ベネズエラに亡命しました。その後、カナダ、南アフリカを経てアメリカに移住し、トランスワールド航空(TWA)やパンアメリカン航空(パンナム)のパイロットとして働きました。

晩年には、3巻からなるドイツのグライダーの歴史に関する大著『Erlebte Rhongeschichte』を執筆、没する直前には自伝『German Air Attache』を出版しました。リーデルの生涯は、グライダーパイロットとしての卓越した能力、国際的な活躍、そしてナチス政権との複雑な関わり、そして戦後の新たな人生という、劇的な変化に満ちたものでした。彼の経験は、歴史研究者やグライダー愛好家にとって貴重な資料となるでしょう。彼の功績は、単なるグライダーパイロットとしてだけでなく、歴史の証人としての役割も担っていると言えるでしょう。

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