ペーチの初期キリスト教墓所
ペーチの初期キリスト教墓所は、かつてローマ帝国の属州パンノニアに位置した都市ソピアナエ（現在のハンガリー・ペーチ）に築かれたネクロポリスです。18世紀以降に発見されたこの遺跡は、4世紀に建造され、キリスト教が公認された後もカタコンベでの埋葬が行われていたことを示す貴重な例です。また、壁画の芸術性が高く評価され、ユネスコの世界遺産に登録されています。
ソピアナエは2世紀に建設された都市で、交易と軍事上の要衝として4世紀には大きく発展しました。世界遺産に登録されている墓所は、この都市の北側に建設され、8世紀までに多くのキリスト教徒が埋葬されました。この墓所の存在は、ハンガリー王国の初代国王イシュトヴァーン1世が国内に10の司教区を設けた際、この地に司教区を置いたことにも影響を与えたと考えられています。
ペーチと改名されたこの都市で、墓所の遺跡が発見されたのは18世紀初頭です。その後、20世紀まで断続的な発掘調査が行われ、様々な遺跡が発見されました。
構成資産は、以下の16箇所の墓地遺跡です。カタコンベの地上部分には礼拝堂なども築かれていたため、地下構造物だけでなく地上構造物も含まれています。
埋葬室1 - 9 (Burial Chamber I - IX)
ケラ・トリコラ (The Cella Trichora)
ケラ・セプティコラ (The Cella Septichora)
初期キリスト教徒の霊廟 (The Early Christian Mausoleum)
初期キリスト教徒の墓地礼拝堂 (The Early Christian Burial Chapel)
対になった壁画墳墓 (The Painted Twin Grave)
壁画のない埋葬室 (Unpainted burial chamber)
共同体埋葬室 (Communal burial chamber)
特に、1872年に発見された埋葬室1は、西側の壁面にペトロとパウロが描かれていることから「ペトロ＝パウロ」と呼ばれています。この埋葬室には、聖書を題材にしたアダムとイヴ、ヨナ、マリアと幼子イエスなどを描いた壁画があり、その芸術性が高く評価されています。
1997年に最初に推薦されましたが、ハンガリー当局によって審議前に取り下げられました。その後、1999年7月に改めて推薦され、翌年8月に推薦書の改訂が行われました。当時の英語の推薦名は「The Complex of 16 Buildings of the Pécs (Sopianae) Early Christian Cemetery」、フランス語名は「Cimetière paléochrétien de Sopianae, Pécs」でした。
[世界遺産]]委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議]は、英語登録名をより簡略化することを検討すべきとしましたが、「登録」を勧告しました。2000年の第24回[[世界遺産委員会で正式に登録され、英語登録名はICOMOSの勧告が反映されました。登録時の正式名称は、英語で「Pécs (Sopianae) Early Christian Cemetery」、フランス語で「Cimetière paléochrétien de Pécs (Sopianae)」となりました。
当初の日本語訳としては、「ペーチ市にある初期キリスト教霊園」などがありました。2003年の第27回世界遺産委員会で名称が「Early Christian Necropolis of Pécs (Sopianae)」（英語）、「Nécropole paléochrétienne de Pécs (Sopianae)」（フランス語）に変更されました。日本語訳としては、資料によって「ペーチ（ソピアネ）にある初期キリスト教墓地遺跡」「ペーチの初期キリスト教墓所」「ペーチュ（ソピアナエ）の初期キリスト教徒の墓地」「ペーチの初期キリスト教墓地」など、若干の違いがあります。
この世界遺産は、以下の世界遺産登録基準を満たし、登録されました。
(3) 現存する、または消滅した文化的伝統、または文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠。
世界遺産委員会の決議では、この基準の適用理由について「ソピアナエの墓所の埋葬室や祈念堂は、ローマ帝国後期のキリスト教徒共同体の力と信仰の顕著な例証を備えている」と説明しています。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例。
世界遺産委員会はこの基準について、「ペーチにあるソピアナエの墓所によって、北西ローマ属州における独特の初期キリスト教葬礼美術・建築が、例外的に良く、かつ完全に明らかにされた」と説明しています。
この墓所は、初期キリスト教の埋葬文化と芸術を今に伝える貴重な遺産として、その歴史的価値を世界に示しています。
歴史
ソピアナエは2世紀に建設された都市で、交易と軍事上の要衝として4世紀には大きく発展しました。世界遺産に登録されている墓所は、この都市の北側に建設され、8世紀までに多くのキリスト教徒が埋葬されました。この墓所の存在は、ハンガリー王国の初代国王イシュトヴァーン1世が国内に10の司教区を設けた際、この地に司教区を置いたことにも影響を与えたと考えられています。
ペーチと改名されたこの都市で、墓所の遺跡が発見されたのは18世紀初頭です。その後、20世紀まで断続的な発掘調査が行われ、様々な遺跡が発見されました。
構成資産
構成資産は、以下の16箇所の墓地遺跡です。カタコンベの地上部分には礼拝堂なども築かれていたため、地下構造物だけでなく地上構造物も含まれています。
埋葬室1 - 9 (Burial Chamber I - IX)
ケラ・トリコラ (The Cella Trichora)
ケラ・セプティコラ (The Cella Septichora)
初期キリスト教徒の霊廟 (The Early Christian Mausoleum)
初期キリスト教徒の墓地礼拝堂 (The Early Christian Burial Chapel)
対になった壁画墳墓 (The Painted Twin Grave)
壁画のない埋葬室 (Unpainted burial chamber)
共同体埋葬室 (Communal burial chamber)
特に、1872年に発見された埋葬室1は、西側の壁面にペトロとパウロが描かれていることから「ペトロ＝パウロ」と呼ばれています。この埋葬室には、聖書を題材にしたアダムとイヴ、ヨナ、マリアと幼子イエスなどを描いた壁画があり、その芸術性が高く評価されています。
登録経緯
1997年に最初に推薦されましたが、ハンガリー当局によって審議前に取り下げられました。その後、1999年7月に改めて推薦され、翌年8月に推薦書の改訂が行われました。当時の英語の推薦名は「The Complex of 16 Buildings of the Pécs (Sopianae) Early Christian Cemetery」、フランス語名は「Cimetière paléochrétien de Sopianae, Pécs」でした。
[世界遺産]]委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議]は、英語登録名をより簡略化することを検討すべきとしましたが、「登録」を勧告しました。2000年の第24回[[世界遺産委員会で正式に登録され、英語登録名はICOMOSの勧告が反映されました。登録時の正式名称は、英語で「Pécs (Sopianae) Early Christian Cemetery」、フランス語で「Cimetière paléochrétien de Pécs (Sopianae)」となりました。
当初の日本語訳としては、「ペーチ市にある初期キリスト教霊園」などがありました。2003年の第27回世界遺産委員会で名称が「Early Christian Necropolis of Pécs (Sopianae)」（英語）、「Nécropole paléochrétienne de Pécs (Sopianae)」（フランス語）に変更されました。日本語訳としては、資料によって「ペーチ（ソピアネ）にある初期キリスト教墓地遺跡」「ペーチの初期キリスト教墓所」「ペーチュ（ソピアナエ）の初期キリスト教徒の墓地」「ペーチの初期キリスト教墓地」など、若干の違いがあります。
登録基準
この世界遺産は、以下の世界遺産登録基準を満たし、登録されました。
(3) 現存する、または消滅した文化的伝統、または文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠。
世界遺産委員会の決議では、この基準の適用理由について「ソピアナエの墓所の埋葬室や祈念堂は、ローマ帝国後期のキリスト教徒共同体の力と信仰の顕著な例証を備えている」と説明しています。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例。
世界遺産委員会はこの基準について、「ペーチにあるソピアナエの墓所によって、北西ローマ属州における独特の初期キリスト教葬礼美術・建築が、例外的に良く、かつ完全に明らかにされた」と説明しています。
この墓所は、初期キリスト教の埋葬文化と芸術を今に伝える貴重な遺産として、その歴史的価値を世界に示しています。
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