ホイールアーチ

ホイールアーチ：車のデザインと機能性を支える重要な構造

自動車のボディにおいて、車輪が収まる部分に設けられた切り欠きをホイールアーチと呼びます。この構造は、単なるデザイン要素ではなく、車両の機能性と安全性を確保するために重要な役割を担っています。

主な機能

タイヤ交換・チェーン装着の容易性: ホイールアーチは、タイヤの交換や雪道走行のためのチェーン装着作業を容易に行えるように確保された空間です。車輪をスムーズに脱着できるよう、適切なサイズと形状が設計されています。
車輪の干渉防止: 特に操舵輪（ステアリングで方向を制御する車輪）においては、ボディとの干渉を防ぐための役割も担っています。旋回時に車輪がボディに接触することを防ぎ、安全な走行を確保します。
デザイン性への貢献: ホイールアーチは、車両のスタイリングにも大きく影響を与えます。車体のデザインと調和した形状にすることで、全体の美観を高めます。近年では空力性能の向上にも配慮したデザインが採用されるケースが増えています。

ホイールアーチの種類と特徴

全ての車両に同じ形状のホイールアーチがあるわけではありません。車種やモデル、さらにはチューニング状況によっても異なる場合があります。

リアホイールアーチの有無: 一部の車両、例えばシトロエンDS（セダンモデル）やホンダインサイトなどでは、リア（後輪）にホイールアーチがないモデルが存在します。これは、デザイン上の意図や空力性能の最適化などを目的として設計されていると考えられます。
エアロパーツとの組み合わせ: マツダRX-7などのチューニングカーでは、空力性能の向上を目的として、ホイールアーチにスパッツと呼ばれるエアロパーツを取り付けることがあります。これは、車輪から発生する乱流を抑制し、空気抵抗を低減することで燃費向上や高速安定性の向上に繋がります。
構造上の工夫: 強度を保つために、ホイールアーチの切り端には「ツメ」と呼ばれる折り込み加工が施されています。このツメは、ボディの変形や破損を防ぐ上で重要な役割を果たしています。

ローダウンやカスタムにおける注意点

車両をローダウンしたり、タイヤサイズを変更してトレッド幅を広げたりする場合、ホイールアーチのツメにタイヤが干渉することがあります。この状態を放置すると、タイヤのバーストを引き起こす危険性があるため注意が必要です。タイヤとツメの干渉を防ぐために、「ツメ折り」と呼ばれる加工が推奨されるケースが多くあります。ツメ折りは専門業者に依頼するのが安全です。

関連用語

フェンダー (自動車): ホイールアーチを含む車輪を覆う外板部分。ホイールアーチはフェンダーの一部と考えることができます。
ランボード: 車体の側面に設けられたステップ状の構造物。ホイールアーチとランボードは、デザイン上関連性を持つ場合があります。

ホイールアーチは、一見すると小さな部品のように見えますが、車両の機能性とデザイン性を両立させる上で重要な役割を担っています。安全な走行と快適性を確保するためにも、その構造と特性について理解しておくことは大切です。

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