ホシハラビロヘリカメムシ

ホシハラビロヘリカメムシ（学名：Homoeocerus (Tliponius) unipunctatus）は、カメムシ目ヘリカメムシ科に属する昆虫です。その名前が示すように、特徴的な黄褐色の体色と幅広の腹部、そして前翅の中央にある丸い黒い斑紋が大きな特徴となっています。野山や畑地、あるいは道端といった比較的開けた場所で、クズをはじめとするマメ科植物に付いている姿をよく見かけます。

形態

成虫の体長はおよそ15mm程度です。体色は全体的に黄褐色で、微細な褐色の点刻が一面に密に施されています。頭部は小さめで、頭頂部にはやや不明瞭ながら暗色の縦筋が2本走っています。触角は赤褐色をしていますが、先端の節は色が濃くなっています。前胸背の側面縁は黄白色をしており、わずかに内側に向かってカーブしています。翅は前翅の端がほぼ腹部の後端に達する長さです。前翅の基部側にある硬い部分（革質部）の中央には、本種を識別する上で重要な、はっきりとした小さな黒い斑紋があります。翅の薄く透明な膜質部は光沢があり、わずかに褐色を帯びています。腹部の縁にある体節ごとの板（結合板）は、それぞれの前縁がやや淡い色をしており、それより後ろ側は少し暗色になっています。体の腹面や歩脚は淡い黄褐色ですが、中胸より後ろの胸部と腹部の各節の中央付近には、小さな黒い斑点が一つずつ認められます。

生態

主にマメ科植物を食草とし、フジやヌスビトハギなど様々な種に付いて生活しています。特にクズの上では非常によく見かけられ、そこで最も普通に見られるカメムシの一つとされています。また、本種には大型の動物の糞から水分や栄養を摂取するという興味深い習性があることが知られています。時には乾燥した糞からも汁を吸おうとする行動が確認できます。

分布

日本国内では本州、四国、九州の主要な島に加え、伊豆諸島、隠岐、対馬、甑島列島、大隅諸島、トカラ列島といった離島部にも広く分布しています。国外においては、台湾、朝鮮半島、中国、ベトナムなど、東アジアから東南アジアの一部にかけて生息しています。

分類と近縁種

ヘリカメムシ科は昆虫の中でも非常に大きなグループの一つで、250属、1800種以上を含み、亜科や族に細分されています。本種が属するハラビロヘリカメムシ属は、ヘリカメムシ亜科のハラビロヘリカメムシ族に含まれます。日本からはこの属の5種が知られています。そのうちオオクモヘリカメムシは、かつては独立した属とされていましたが、現在は本属のオオクモヘリカメムシ亜属に分類されています。この種は本種より一回り大きく細身で、緑色をしており外見が異なります。残りの4種は本種と同じハラビロヘリカメムシ亜属に属します。アズキヘリカメムシは、腹部が幅広にならず体の側面がほぼ平行であるため、容易に区別可能です。残りの2種は本種と非常によく似ています。ハラビロヘリカメムシは古くから知られている種で、大きさや体形は本種に酷似しています。前翅の黒い斑紋も存在しますが、痕跡程度で淡く目立ちません。より確実な区別点として、触角第1節が短いこと、本種では円筒形の第2・3節が、この種では扁平な三角柱状になる点があります。この種は北海道から九州まで、本種より広い範囲で見られます。もう一つの似ている種はシロヘリハラビロヘリカメムシです。比較的近年になって確認された種で、本種よりやや小柄です。腹部の縁、結合板の部分がはっきりとした黄白色で、表面に微細な黒い点刻がない点でも区別されます。この種は本州から南西諸島にかけて分布します。これらの近縁種の中で、日本では本種が最も普通に見られます。

利害

稀に畑のダイズに発生することがあります。主に茎や葉から汁を吸いますが、時には莢にも付くことがあります。しかし、一般的に農作物への被害が問題となるほどの数に達することは少ないようです。

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