ホスカルネット

ホスカルネット：サイトメガロウイルス感染症治療薬

ホスカルネット（Foscarnet）は、ギ酸にリン酸が置換した構造を持つ抗ウイルス薬です。主にサイトメガロウイルス（CMV）感染症の治療に用いられ、商品名ホスカビルとして、ノーベルファーマから製造販売されています。

効能・効果

ホスカルネットは、主に以下の疾患の治療に用いられます。

後天性免疫不全症候群(AIDS)患者におけるCMV網膜炎
造血幹細胞移植患者におけるCMV血症

先天性または新生児CMV[感染症]]には使用されず、感染予防薬としても用いることはできません。なお、海外においては、CMVに加え、単純ヘルペスウイルス][[感染症や、既治療のHIV感染症に対する救済療法としても使用されています。

作用機序

ホスカルネットは、ピロリン酸に似たホスホン酸構造を持ちます。この構造が、ウイルスのDNAポリメラーゼのピロリン酸結合部位に選択的に結合することで、ウイルスのDNA合成を阻害します。ヒトのDNA合成酵素には影響を与えません。

アシクロビルやガンシクロビルは、ウイルス側のプロテインキナーゼ（チミジンキナーゼやUL97など）の活性化を必要としますが、ホスカルネットはこれらの酵素による活性化を必要としません。そのため、アシクロビルやガンシクロビルへの耐性を獲得したHSVやCMVに対しても有効な場合があります。ただし、アシクロビル・ガンシクロビル耐性変異がホスカルネットへの耐性を示すケースも存在します。

副作用

ホスカルネットの重大な副作用として、ショック、急性腎不全、心不全、心停止、血栓性静脈炎、痙攣発作、テタニー、呼吸抑制、麻痺性イレウス、失語症、痴呆、横紋筋融解症、敗血症などが報告されています。これらの副作用の発現頻度は、添付文書によると、1～10％または1％未満、あるいは頻度不明とされています。

その他、10％以上の患者に発現する副作用として、貧血、血中ヘモグロビン減少、顆粒球減少、腎機能異常、低マグネシウム血症、低カリウム血症、低カルシウム血症、悪心・嘔吐、知覚異常、頭痛、発熱などが挙げられています。

まとめ

ホスカルネットは、CMV感染症治療に有効な抗ウイルス薬ですが、腎機能障害などの重篤な副作用のリスクを伴います。そのため、使用にあたっては、医師の厳重な管理下で行われる必要があります。特に、腎機能が低下している患者、高齢者などへの投与には、細心の注意が必要です。 治療を受ける際には、医師と十分に相談し、副作用についても理解しておくことが重要です。

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