アシクロビル

アシクロビル：ヘルペスウイルス感染症治療薬

アシクロビルは、単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスといったヘルペスウイルス感染症の治療に用いられる医薬品です。グラクソ・スミスクライン社が製造販売する「ゾビラックス」が有名ですが、他にも多くの後発医薬品が市販されています。錠剤や注射剤だけでなく、軟膏などの外用薬も存在し、症状や患者の状態に合わせて適切な剤形が選択されます。

効果と効能

アシクロビルは、ヘルペスウイルスの増殖を抑制することで、感染症の症状を軽減します。具体的には、単純ヘルペスウイルス感染症（口唇ヘルペスなど）、水痘、帯状疱疹、そして重症例では脳炎や髄膜炎といった神経系の合併症にも効果があります。骨髄移植を受ける患者さんにおいて、ヘルペスウイルス感染症の発症予防にも用いられます。

副作用

アシクロビルは比較的安全な薬ですが、副作用の可能性も存在します。重大な副作用としては、アナフィラキシー（呼吸困難や血管浮腫など）、血液障害（汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少など）、神経系の障害（意識障害、痙攣など）、皮膚の重篤な発疹（中毒性表皮壊死症、スティーブンス・ジョンソン症候群など）、呼吸器症状（呼吸抑制、無呼吸）、肝臓や腎臓への影響などが報告されています。これらの副作用は、注射剤や内服薬で比較的多くみられ、外用薬では頻度が低くなります。

副作用の発現頻度は、剤形によって異なります。注射剤では4.60%、錠剤・顆粒剤では2.09%、軟膏では0.87%、眼軟膏では13.57%と報告されています。ただし、後発医薬品については、発現頻度に関するデータが不足している場合もあります。

薬理作用

アシクロビルは、ウイルスDNAポリメラーゼという酵素の働きを阻害することで、ウイルスの増殖を抑制します。ヘルペスウイルスに感染した細胞内では、ウイルス独自のチミジンキナーゼという酵素が働いています。アシクロビルはこの酵素によってリン酸化され、活性型となり、ウイルスDNAポリメラーゼに作用します。結果、ウイルスDNAの複製が阻害され、ウイルスの増殖が抑えられます。

化学的性質

アシクロビルは、白色から微黄白色の結晶性の粉末です。水には溶けにくいですが、ジメチルスルホキシドには溶けやすいという性質を持っています。

歴史

アシクロビルは、1974年にアメリカの科学者ガートルード・エリオンによって開発されました。日本では、グラクソ・スミスクライン社が「ゾビラックス」の商品名で販売を開始し、その後、多くの後発医薬品が登場しました。2007年には、一般用医薬品として「ヘルペシア軟膏」なども発売され、より手軽に購入できるようになりました。一般用医薬品として発売されたことで、薬剤師による指導が必ずしも必要なくなったことも、社会的な議論を呼ぶこととなりました。

まとめ

アシクロビルは、ヘルペスウイルス感染症治療において重要な役割を果たす医薬品です。様々な剤形が存在し、症状や患者の状態に合わせて適切な治療が行われます。しかし、副作用の可能性もあるため、医師や薬剤師に相談の上、正しく使用することが重要です。

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