ホソバオゼヌマスゲ

ホソバオゼヌマスゲ（Carex nemurensis）

概要

ホソバオゼヌマスゲはスゲ属に属する植物で、主に本州の特定地方や北海道、さらには国外にまで分布しています。この草本は匍匐枝を持たず、短い根茎から成長し、高さは35-60cm程度に達します。その特異な形状から、特に湿地に適応した種とされています。草茎の上部はざらざらしており、葉は濃い緑色で、幅はわずかに2-3mm程度です。

特徴

ホソバオゼヌマスゲは、特に花の構造に注目すべきです。この植物では、6月から7月の間に花を咲かせますが、花序は柄なしの小穂が5-7個集まっており、間隔をおいて配置されています。雄花と雌花が同時に存在し、雌花がトップに、雄花が基部に位置する典型的な構造を持ちます。それぞれの小穂は長さが0.5-0.8cmほどで、雌花の鱗片は淡褐色で、果胞とほぼ同じ長さです。果胞は卵型で、長さが3mm程度、細かい鋸歯がエッジにあります。また、果胞の先端にはわずかに2つに切れ込んだ形状をしています。

この植物の和名は「細葉尾瀬沼スゲ」で、尾瀬沼に生えることが特定の理由とされています。この名は、特に本種がヒロハオゼヌマスゲと混同されていたことに起因し、葉が細いことから命名されました。

分布と生育環境

日本国内では、北海道と本州の中部以北に見られますが、本州の生息地は限られています。具体的には、青森県を除き、尾瀬ヶ原や霧ヶ峰、上高地などではっきりとした生育地が確認されています。北海道では比較的広範囲に分布し、湿地や低層湿原、泥炭湿地に自生します。

類似種

この種は小穂が雌雄性であり、また果胞に関連する特性からハクサンスゲ節に分類されます。日本にはこの節に属する種が9つ存在しており、ホソバオゼヌマスゲは特に匍匐茎を持たず、雌花鱗片が褐色である点で他の種と区別されます。類似するヒロハノオゼヌマスゲと比較すると、葉の幅が広く、果胞の長さも異なるため、識別することが可能です。

保護状況

環境省のレッドリストでは、ホソバオゼヌマスゲは準絶滅危惧種として位置づけられています。特に、栃木県では「刈り込み」が数少ない生息地への影響因子とされています。人目にはつきにくいカヤツリグサ科の植物が、環境保護の視点から保護される必要性が指摘されています。

参考文献

• - 星野卓二他、『日本カヤツリグサ科植物図譜』、(2011) 平凡社
• - 勝山輝男 (2015)『日本のスゲ 増補改訂版』（文一総合出版）
• - 牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017) 北隆館
• - 正木智美編、『日本産スゲ属分布図集』、(2018) すげの会

もう一度検索