ホブルスカート

ホブルスカート：束縛と解放の象徴

ホブルスカートは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、特に1910年代に流行した、裾が極端に狭いスカートです。着用者の歩幅を著しく制限するデザインが特徴で、当時の女性のファッションと社会状況を色濃く反映しています。

歴史的背景

足の動きを制限するスカートの原型は1880年代のアメリカ西部に登場しましたが、「ホブルスカート」という名称は、1910年から1913年頃に裾の狭い一時的な流行のスカートを指す言葉として初めて使われました。このスカートは、パリのデザイナー、ポール・ポワレによって考案されたと考えられています。ポワレは、1908年10月にハート・ベルグがウィルバー・ライトと共に飛行機に搭乗した際、スカートが風でめくれるのを防ぐために裾をロープで縛った様子にインスピレーションを受け、ホブルスカートをデザインしたと言われています。

ホブルスカートを着用して歩く際には、スカートが破れるのを防ぐため、膝下のあたりに組み紐の足枷が用いられることもありました。また、スカートの内側に伸縮性のあるバンドを装着し、歩幅が広がりすぎるのを防ぐ工夫も凝らされました。一部の女性は、足首で裾を絞ったハーレムパンツ風のズボンをスカートの下に着用しましたが、このスタイルは多くの人々から非難されました。

1910年代初頭のニューヨーク・タイムズには、ホブルスカートを着用する女性に関する記事が多数掲載されています。当時のニューヨークのファッション業界は、パリのファッション画に描かれたスリムなスタイルを忠実に再現しようと努めました。女性たちはホブルスカートを履いて歩くための独自のテクニックを開発し、実用性には欠けるものの、このスカートは大流行しました。

ホブルスカートは、足首丈の細身のスカート全般を指す言葉として用いられることもありましたが、スリットや隠れたひだ、立体裁断などを施し、動きやすさを向上させたデザインも登場しました。これは、女性が社会でより活発に活動するようになった時代背景を反映したものです。現在では、イブニングドレスやウェディングドレスなど、特別な機会に着用されるスタイルが残っています。

現代におけるホブルスカート

20世紀以降も、長くて細身のスカートは様々な形で再登場しています。特にイブニングドレスや、1950年代から人気を集めているペンシルスカートがその代表例です。また、ボンデージファッションにおいては、皮革やPVC、ラテックスなどで作られたホブルスカートが定番アイテムとなっています。

現代では、ホブルスカートは動きを制限するためではなく、ゴシックファッションやBDSMの場で、あるいはイブニングドレスやウェディングドレスとして、その独特なシルエットが楽しまれています。

大衆文化におけるホブルスカート

ホブルスカートは、映画やテレビドラマにも登場し、その独特なデザインが視覚的なインパクトを与えています。

イントレランス：主人公が男性に印象を与えるためにホブルスカートを即席で作って着用するシーンがあります。
アダムス・ファミリー：モ Morticia（モーティシア）が、常に黒く光沢のあるゴシック調のホブルドレスを着用しています。
ディック・トレイシー：ブレスレス・マホニー（マドンナ）が、黒く光沢のあるタイトなガウンで登場します。
アグリー・ベティ：「氷上のケーキ」のエピソードで、アマンダ（ベッキー・ニュートン）がタイトな銀色のゴム製ホブルドレスを着ています。
何という行き方！：ルイーザ・メイ・フォスター（シャーリー・マクレーン）が、赤く光沢のあるペンシルスカート姿で登場します。
スタティック・ショック：初期のシーズンで、デイジー・ワトキンが紫のペンシルスカートを着ています。
パレーズ・エンド：シルビア・ティーチェンスが、義母の葬儀でホブルドレスを着用しています。貴族からはそのファッションセンスを批判されましたが、使用人からは感嘆されました。

ホブルスカート