纏足

纏足（てんそく）とは

纏足は、中国で唐の末期から辛亥革命ごろまで、主に女性に対して行われていた風習です。幼少期から足に布を巻き付け、足の成長を抑制することで、足を小さく変形させました。現代中国では「小脚」とも呼ばれています。

概要

当時の文化人の間では、女性の小さな足は「金のハス」に例えられ、美の象徴とされていました。そのため、人工的に足を小さくする施術が考案されました。具体的には、幼児期から足の親指以外の指を足の裏側へ折り曲げ、布で強く縛って固定します。これにより、年齢を重ねても足が小さいままとなります。理想的な大きさは三寸（約9cm）とされ、「三寸金蓮」と呼ばれました。これは、黒髪や白い肌と並び、美しい女性の代名詞でした。

小さく装飾された靴を履かせ、その美しさや歩き方などの仕草を楽しむ習慣もありました。また、纏足によってバランスをとるために内股の筋肉が発達し、女性の局部の筋肉も発達すると考えられていました。足が小さくなると、走ることが困難になり、そこに女性の弱々しさが求められました。貴族階級では、女性を外に出さないことで貞節を維持しやすくする目的もありました。また、足が小さいために踏ん張る必要があり、そこに性的な魅力を感じさせたとも言われています。

時代によっては、見合いの席で足の大きさを尋ねることもあり、纏足をしていない女性は結婚が難しかったとされています。纏足は男性の性的な欲求を刺激するものであり、女性は夫や恋人以外の男性に纏足を見せることはありませんでした。男性は、纏足女性の足の指の間にアーモンドを挟んで食べたり、足の指の間にはさんだ器で酒を飲んだりする遊びもありました。文人の間では、纏足の妓女の靴に酒を注いで飲む「行酒」という遊びも流行しました。

纏足によって歩行が困難となるため、貴族の女性には侍女が付き添いました。一方、家事や農作業を自ら行う庶民の女性にとっては、大きな苦痛を伴いました。農村部では、娘に機織りや刺繍など長時間座ったままの仕事をさせる目的もありました。

唐の末期に始まった纏足の風習は、清の時代には不健康かつ不衛生であるとして、皇帝が度々禁止令を出しました。しかし、既に文化として深く浸透していたため、効果はなく、行われなくなったのは辛亥革命の頃です。台湾でも纏足は行われていましたが、日本統治時代に台湾総督府が廃止運動を行ったため、廃れました。客家人の女性は働くことが奨励されていたため、纏足をせず「大足女」と揶揄されていました。

施術方法

女の子が3歳から4歳になると、木綿の布で足を縛り始め、足の発達を抑えます。施術は、発熱を伴うため、秋に行われることが多かったようです。親指を除く4本の指を内側に折り曲げ、夜も寝られないほどの苦痛を伴いながら、縛り続けます。痛み緩和のためにアヘンを吸わせることもありました。

施術は2段階で行われます。第1段階では、親指以外の4本の指を内側に曲げ、第2段階で足の甲を縦に曲げていきます。約2年かけて、足の柔らかい幼少期に変形させます。その後も縛り続け、3日に1度消毒するなど、生涯にわたって手入れが行われます。その結果、足の形状はハイヒールによく似た形になりました。

歴史

纏足の起源には諸説あります。一説には南斉から始まったとも言われますが、一般的には南[[唐]]の李煜が足の細い女性を好んだことから始まったとする説が有力です。その後、北宋時代に徐々に普及し始め、元末明初に盛んになりました。

当時の文献には、「熙寧、元豊以前は少なかったが、近年では人々が互いに真似しあうようになり、そうでないのを恥とする」という記述があります。アラブ人や西洋人の見聞録からも、北宋時代から流行し始めたことが伺えます。この流行は、漢民族が民族主義的な儒教を発展させた時期と重なっています。華北を中心に農村部にまで拡大していったようです。少数民族や女真族（満州族）には纏足の習慣はありませんでしたが、憧れの対象となり、不安定な「旗靴」を履いて歩き方を真似ることもありました。

女真族の建てた清朝が纏足禁止令を出しても効果はなく、義和団の乱以降、近代国家への動きの中で反対運動が起こり、都市部を中心に下火になりました。しかし、その後も隠れて行われ、中国全土で見られなくなったのは第二次世界大戦後です。文化大革命で反革命的行為と見なされたことも、纏足が絶えた理由の一つです。現在でも、70歳以上の高齢者の一部に見られます。

西洋の足

纏足ほど極端なものではありませんが、ヨーロッパでも、大きな足は労働者階級のものと認識され、貴族階級では小さな足が好まれました。特に17世紀にバレエが流行すると、トウシューズによって小さくなった足は、貴族の証となっていきました。中には、冷水に足を浸して無理やり小さな靴を履く人もいました。

纏足は、中国の歴史と文化に深く根ざした風習であり、その背景には社会的な要因や美意識、そして男性の欲望といった複雑な要素が絡み合っていました。

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