ホメーロス風讃歌

ホメーロス風讃歌とは

ホメーロス風讃歌（Ὁμηρικοὶ ὕμνοι）は、古代ギリシア時代に成立した作者不明の33篇から成る讃歌集です。この作品はそのスタイルから「ホメーロス風」と称されており、ホメーロスの叙事詩『イーリアス』と『オデュッセイア』と同じくヘクサメトロスという韻律およびイオニア方言が使用されています。このため、古代の人々の中には、これらの讃歌の作者はホメーロスだと考えた者もいたため、その名が名付けられました。

讃歌の起源と時代

ホメーロス風讃歌の最も古い例は紀元前7世紀ごろに遡り、これはヘーシオドスの後の時代に位置づけられます。この頃、ホメーロスの叙事詩が文献として記録されたとも考えられています。ホメーロス風讃歌の多くは、6世紀から7世紀頃に、ヘレニズム時代の作者によって編纂されたと推測されており、特にアレースへの讃歌に関しては、それまでのものが失われた後、新たに書かれた可能性が高いとされています。

アポローンへの讃歌は古代文献において、ホメーリダイの一員であるキオスのキュナイトスによる作とされ、紀元前522年に行われた祭典のために作られたことが記録されています。

様々な形式と内容

ホメーロス風讃歌は、長さがさまざまで、最も長いものは祈りや讃美、物語を含み500行を超えるものも存在します。一方で、短いものは数行で構成され、時には物語部分が欠落しているケースもあります。これは、必要な部分だけを省略した結果なのかもしれません。

興味深いことに、現存する東ローマ帝国の写本には、他の讃歌とは異なる形式のものも含まれています。1777年にモスクワで発見された15世紀の写本には、『ディオニューソスへの讃歌』と『デーメーテールへの讃歌』という不完全な作品が含まれており、これまで知られていなかった内容が明らかになりました。

讃歌の主題

総じて、ホメーロス風讃歌はギリシア神話の重要な神々を賛美する作品です。短い讃歌は、祭りの際にプロのラプソドスが叙事詩を朗唱する際の前口上として機能した可能性があり、次の歌へ移る際の区切りとして使われていたとも考えられます。また、讃歌のうち一つ『主人のために』は、形式は讃歌ではありませんが、ラプソドスにおける主の厚いもてなしが神々に対する聖なる義務とされることを示唆しています。

まとめ

ホメーロス風讃歌は、古代ギリシアにおける文学の重要な一部であり、その多様な形式と優れた詩的表現は、後の文学や文化に大きな影響を与えました。これらの作品を通じて、神々への崇拝や人間ドラマが描かれ、古代ギリシアの宗教観や価値観を知る貴重な手がかりを提供しています。

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