ホヤ・デ・セレン

ホヤ・デ・セレンについて

ホヤ・デ・セレン（Joya de Cerén）は、エルサルバドルのラ・リベルタ県に位置する重要な考古遺跡です。このサイトは1976年に発見され、マヤ農耕民の集落が火山灰に埋もれた状態で保存されていることから、「メソアメリカのポンペイ」とも称されています。1993年の世界遺産登録以降、ホヤ・デ・セレンはエルサルバドルの文化的遺産の象徴となっています。この遺跡の名称は「セレンの宝石」であり、そこに眠る歴史的価値を示しています。

遺跡の形成

ホヤ・デ・セレンは、マヤ文化圏の南東端に位置しており、紀元前1200年頃から農業を営む小規模な集落が形成され始めました。しかし、西暦200年頃、近隣のイロパンゴ山の噴火によって地域は荒廃し、一時的に無人となりました。約400年後、新たに人々がこの土地に戻り、6世紀にはホヤ・デ・セレンの村落が築かれたとされています。591年頃、再びロマ・カルデーラ山が噴火し、集落は14層の火山灰に覆われました。

この噴火により、住民たちは無事避難することができましたが、慌ただしい状況の中で日常的に使われていた道具や食事の一部が残されました。火山灰は比較的低温で降り積もり、村全体が4メートルから8メートルの厚さの層で包まれることによって、非常に良好な保存状態を保たれました。

発見と研究

ホヤ・デ・セレンは1976年、エルサルバドル政府が小麦用のサイロを建設するために土地を整地していた際、偶然ブルドーザーの運転手によって発見されました。その後、1978年と1980年に、コロラド大学の教授ペイソン・シーツが本格的な調査を開始しましたが、エルサルバドル内戦により一時中断されました。調査は1989年に再開され、その後も継続されています。

発掘された遺物には、日干しレンガで作られた建物や共同場としての浴場、大集会場、宗教的なピラミッド型の建物が含まれます。また、火山灰が落ち着いた後に多種の植物の痕跡が発見され、特にキャッサバ畑の存在が重要視されています。これはアメリカ大陸の考古遺跡で発見された最古のキャッサバ耕作地とされています。

世界遺産としての位置づけ

1989年にエルサルバドル政府はホヤ・デ・セレンを国定史跡に指定し、1991年には世界遺産条約の締約を行いました。続いて、1992年には正式に世界遺産への推薦が行われ、ICOMOSから1993年に登録が勧告されました。この遺跡は、メソアメリカの文化の中で日常生活が保存されている数少ない例とされています。

保存と展示

1990年代初頭には公開が行われていませんでしたが、1990年代後半からは一部の建物が特別な樹脂で覆われ、一般公開されるようになりました。以降で計7回にわたり、世界遺産基金から保全活動への助成を受けています。

ホヤ・デ・セレンは、マヤ文化を理解する上で欠かせない資料となっており、その価値は今なお多くの人々によって評価されています。この遺跡は、過去の人々の生活様式や文化を現在に伝える重要な証拠として、未来に継承されていくことでしょう。

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