ホリールード宮殿

ホリールード宮殿：スコットランド王室の歴史を物語る宮殿

ホリールード宮殿（Palace of Holyroodhouse）は、スコットランドの首都エディンバラに位置する、歴史と風格を兼ね備えた王宮です。その起源は1128年にデイヴィッド1世によって建てられた修道院に遡り、15世紀からはスコットランド王室の主要な住居として、そして現在では英国王室の公式訪問時の滞在先として重要な役割を果たしています。

修道院から宮殿へ

12世紀にアウグスティヌス派の修道院として始まったこの場所は、かつて多くの戴冠式や王族の結婚式が執り行われた神聖な場所でした。しかし、宗教改革の波を受け、礼拝堂は破壊され、その一部は廃墟として現在も残っています。修道院の役割は、近隣のカノンゲイト教会へと引き継がれ、現在ではエリザベス2世がホリールード宮殿滞在中に礼拝を行う教会となっています。

王室の住居としての発展

15世紀に入ると、宮殿の北側にゲストハウスが建設され、中世のスコットランド王たちがここを訪れるようになりました。その後、15世紀後半からは正式な王宮として使用されるようになり、ジェームズ2世がこの地で誕生し、戴冠、結婚式を挙げるなど、歴史的な出来事の舞台となりました。ジェームズ4世の時代には大規模な改修が行われ、宮殿としての機能が整えられました。

宮殿の構造と歴史的出来事

宮殿は修道院の西側の回廊に沿って四角形に建てられ、礼拝堂、ギャラリー、王室の居室、大広間などが配置されています。特に、メアリー・ステュアートが過ごした北西塔の部屋は、彼女の秘書であるダヴィド・リッツィオが殺害された場所として、多くの旅行客が訪れる場所です。部屋の天井にはメアリー・ステュアートとジェームズ6世のモノグラムが記されており、当時の歴史を今に伝えています。また、メアリーとフランソワ2世の結婚を記念した紋章も刻まれています。

衰退と復興

ジェームズ6世がイングランド王位を継承するためにロンドンへ移ると、宮殿はかつての王宮としての役割を一時的に失いました。しかし、チャールズ1世がスコットランド王として戴冠式を行った場所でもあり、その後、オリヴァー・クロムウェルの占領を経て、チャールズ2世の時代には建築家ウィリアム・ブルースによって再建され、現在の姿となりました。

近代のホリールード宮殿

近年では、英国王室が公式行事の一環としてスコットランドを訪れる際の滞在先として利用されています。エリザベス2世は毎年夏に滞在し、スコットランド上級相との面会や、EUの議長国であった際には欧州会議の開催地にもなりました。また、宮殿は王室メンバーの滞在がない場合は一般に公開され、多くの人々がその歴史的価値を肌で感じることができます。

宮殿の管理人

1646年、チャールズ1世が初代ハミルトン公爵を『ホリールードの管理人』に任命して以来、その子孫が世襲でそのポストを守っています。この職はスコットランド宮廷における重要な称号の一つとなっています。

ホリールード宮殿は、その長い歴史の中で多くの変遷を経てきましたが、常にスコットランドの歴史と深く関わり、王室の権威を象徴する存在であり続けています。訪れる人々は、その壮麗な建築美だけでなく、数々の歴史的事件の舞台となったこの場所から、深い歴史の息吹を感じ取ることができるでしょう。

もう一度検索