ホワイト・ロッジ

ホワイト・ロッジの歴史

ホワイト・ロッジは、イギリス、ロンドンのリッチモンド公園内にある、ジョージアン様式の優美な邸宅です。その歴史は18世紀に遡り、当初はジョージ2世の狩猟用別邸として建てられました。その後、王室の所有を経て、現在はロイヤル・バレエ学校のロウアー・スクールとして、未来のバレリーナたちが日々研鑽を積む場所となっています。

建設と初期の歴史

1727年、ジョージ2世は即位直後に狩猟用別邸の建設を命じ、建築家ロジャー・モリスがその設計を担当しました。1730年に完成した当初はストーン・ロッジと呼ばれていましたが、近くにあったオールド・ロッジと区別するために、すぐにニュー・ロッジに改称されました。オールド・ロッジは、ジョージ2世が初代イギリス首相ロバート・ウォルポールのために建てたもので、ウォルポール自身も狩猟のため頻繁に訪れ、執務もそこで行ったと伝えられています。

ジョージ2世の妃キャロラインもニュー・ロッジを愛しましたが、1737年に彼女が亡くなると、ニュー・ロッジはウォルポールに譲られました。ウォルポールの死後、1751年にキャロラインの娘アメリアに引き継がれました。アメリアはリッチモンド公園の保護官となり、公園を一般公開しませんでしたが、訴訟の結果、公園は再び一般に開放されました。アメリアはロッジに翼を増築し、その姿を大きく変えました。

ホワイト・ロッジへの改称

1760年にアメリアが保護官を辞任した後、首相のジョン・ステュアートが後任となりました。この頃、ニュー・ロッジはホワイト・ロッジと呼ばれるようになったと考えられています。メアリー・コーク夫人の日記には、1768年にジョージ3世とシャーロット王妃がホワイト・ロッジを訪れたという記述があります。18世紀末には一時荒廃したものの、修復され、1805年にはジョージ3世が首相ヘンリー・アディントンに下賜しました。また、ホレーショ・ネルソンがトラファルガーの海戦前にホワイト・ロッジでアディントンと会談したという逸話も残っています。

19世紀のホワイト・ロッジ

1844年にアディントンが亡くなると、ヴィクトリア女王はホワイト・ロッジを叔母メアリーに譲りました。1857年にメアリーが亡くなると、王配アルバートは、息子アルバート・エドワード（後のエドワード7世）の教育の場としてホワイト・ロッジを選びましたが、エドワード7世はそこで退屈な日々を送りました。1861年には、ヴィクトリア女王が夫アルバートと共に、悲しみを癒すためにホワイト・ロッジに滞在しました。しかし、その直後にアルバートが亡くなり、女王は深い悲しみに暮れることになりました。

その後、テック公フランツとその妻メアリー・アデレードがホワイト・ロッジに住みました。メアリー・アデレードは浪費家として知られ、借金のために海外逃亡する事態にもなりました。1894年には、ジョージ5世妃となるヴィクトリア・メアリーがホワイト・ロッジで長男（後のエドワード8世）を出産し、ヴィクトリア女王もこの曽孫に会うためにロッジを訪れています。

20世紀以降

1901年にヴィクトリア女王が亡くなった後、ホワイト・ロッジにはエリザ・エマ・ハートマンが住みましたが、1909年には破産しました。その後、1923年には、ヨーク公アルバート（後のジョージ6世）の新婚旅行の際に王室の手に戻りました。第二次世界大戦後には、さまざまな人物が居住し、1954年までジェームズ・ヴィーチ大佐が住んでいました。

ロイヤル・バレエ学校

1955年、ホワイト・ロッジはサドラーズ・ウェルズ・バレエ学校（後のロイヤル・バレエ学校）に恒久的な校舎として利用されることになりました。1956年には勅許によりロイヤル・バレエ学校に改称され、現在では世界有数のバレエ学校として知られています。

学校設立に伴い、バレエ博物館が拡大・移転され、ホワイト・ロッジの歴史に関連するギャラリーが追加されましたが、博物館は2015年に閉鎖されました。現在、ホワイト・ロッジでは、プロのバレエダンサーを目指す11歳から16歳の生徒たちが、全寮制の環境でバレエの技術を磨き、その歴史と伝統を受け継いでいます。

この歴史ある邸宅は、過去には王族や貴族の生活の場であり、現在は未来のバレリーナを育む教育機関として、その役割を変えながらも、リッチモンド公園の中で静かに佇んでいます。

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