ホワット・ユー・ガット

『ホワット・ユー・ガット』の詳細

ジョン・レノンが1974年にリリースしたアルバム『心の壁、愛の橋』に収録される「ホワット・ユー・ガット」は、レノンの個人名義としての4枚目のアルバムの中でも特に興味深い楽曲です。この曲は、その時代の他の楽曲とは一線を画し、ファンキーなサウンドで構成されています。実際、前年に発表されたスティービー・ワンダーの名作「インナーヴィジョンズ」を意識したアレンジがなされており、レノンの独特なスタイルが際立っています。

このトラックには、スティービー・ワンダーと共演経験を持つトランペット奏者スティーブ・マダイオが参加しており、より一層のグルーヴ感を生み出しています。レノンの楽曲の中では、ジャムセッションナンバーを除き、自作曲に邦題が与えられていない唯一の曲でもあり、そのユニークさが際立っていると言えるでしょう。

歌詞の冒頭部分では、「迷うな、お前には本当の自分があるという事を／お前も知っているだろ? 裸の王様の話を」と歌われています。このラインから、すべてを失うことによってこそ本当に自分自身を認識するというテーマが明示されます。

サビの部分では、レノンの心情が強く表現されており、「誰も失うまでは自分の持ち物を知らない／失ってはじめてわかる／ああ、もう一度チャンスがあったらば、と嘆く」と繰り返されます。このフレーズは、彼の過去の経験や、特にビートルズ時代の相棒ポール・マッカートニー、さらには彼が「失われた週末」と呼んだ時期にオノ・ヨーコとの別れを経験した時の思いが反映されています。

レノンは、重要なものを失って初めて自分の内面を理解し、失った後悔がつきまとうことを歌っています。「もう一度チャンスがあったら…」という感情は、この曲全体に通底しており、当時の彼の心境を色濃く示しています。

時が経つにつれて、レノンはヨーコと和解し、「失われた週末」に終止符を打ちました。また、ポール・マッカートニーとの関係修復の可能性についても考えていましたが、1980年12月8日に悲劇的な事件が起こり、彼らの関係は未解決のままとなりました。

この曲は、『心の壁、愛の橋』のセカンドシングルとしてリリースされ、A面の「夢の夢が真夜中を突っ走れ」と共に注目を集めましたが、B面曲としてもシングルカットが行われました。レノンが自己探求の旅をナビゲートするこの楽曲は、聴く者に深い共鳴をもたらす力を持っています。

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