ホンダ・シルクロード

ホンダ・シルクロード（CT250S）：自由な走りを求めるための1台

1981年、ホンダ技研工業は新たなオートバイ、シルクロード（型式名：L250S、輸出名称：CT250S）を発表しました。これは、単なるオフロードバイクではなく、オンロードとオフロードの両方を快適に走破できる、ツーリングに特化した軽二輪車です。

ツーリングの楽しさを追求した設計

シルクロードは、同時期に発売されたCT110やTL125Sイーハトーブと共に、「トレッキングバイク」として位置付けられました。雄大な自然をゆったりと巡る、新しいオートバイの楽しみ方を提案したのです。その車名は、シルクロードが持つ壮大な夢とロマンに由来しています。

ベースモデルとなったのは、1980年から製造されていたロードスポーツモデル、CB250RSです。しかし、シルクロードは単なる派生モデルではありません。エンジン、車輪、サスペンション、ブレーキ、そしてタンクやシートなど、多くの部品が変更され、ツーリングに最適な仕様に改良されました。

主要な改良点

まず、心臓部であるエンジンは、1978年から発売されていたXL250SのL250SE型エンジンをベースに、CT250S専用設計として搭載されています。排気量は248ccの空冷4ストローク4バルブSOHC単気筒です。フレームやスイングアームはCB250RSと酷似していますが、XL250Sとは大きく異なります。特に、前輪は23インチとトレールモデルに相応しいサイズが採用されています。

さらに、シルクロードにはホンダ独自の「スーパーロー・ギア」が搭載されました。これは通常の1速よりもさらに低いギア比となっており、登坂路やぬかるみ、砂地など、あらゆる状況での優れた走破性を発揮します。このスーパーロー・ギアと5速ミッションの組み合わせにより、舗装路から悪路まで、幅広い路面状況に対応できる性能を備えています。

その他の改良点としては、シングルシートと大型キャリアの採用（タンデムステップは標準装備）、H4ハロゲンバルブ（60/55w）ヘッドライト、キャブレターの変更、フロントホイールの19インチ大径化（ドラムブレーキへの変更）、6段マニュアルトランスミッション（スーパーローギア追加）、鉄製スキッドプレートとフロントフォークブーツの装備、ベークライト製ヒートインシュレーターの追加、セルフスターターの搭載、耐久性に優れたグリース封入タイプドライブチェーンの採用など、数多くの改良が施されています。タンデムシート、センタースタンド、エンジンガードはオプションとして用意されました。

ツーリング性能を極めた一台

これらの改良により、シルクロードは単なる通勤や通学用途を超え、週末のツーリングや、本格的な長距離旅行にも対応できる、まさにツーリングに特化したオートバイと言えるでしょう。スーパーローギアによる強力な低速トルクは、未舗装路や急勾配の坂道でも安心感を与えてくれます。また、快適な走行を支える、様々な装備も魅力です。

1984年に生産終了となりましたが、その後のデュアルパーパスモデルの進化に大きな影響を与えたモデルと言えるでしょう。現在では希少な存在となっていますが、その魅力は今もなお多くのライダーを惹きつけています。

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