ホンダ・ジョルノクレア

ホンダ・ジョルノクレア：レトロとイノベーションの融合

ジョルノクレアは、本田技研工業が1999年から2003年まで製造販売していた49ccスクーターです。愛称にもなっている「ジョルノ」は、その直系の後継機種として、イタリア語の挨拶「Buongiorno」と英語の「CREATIVE」「CLEAN」を組み合わせた造語から名付けられました。

環境性能と先進技術

開発コンセプトは「クリーン・エコノミー・サイレント・タフ」。このコンセプトを体現するため、同社原動機付自転車クラスのスクーターとしては16年ぶりとなる水冷4ストロークエンジンを搭載しました。これは、1986年のタクトアイビー以来の採用でもありました。このエンジンは、SOHC2バルブ単気筒で、従来の2ストロークエンジンと比較して約30%の燃費向上を実現。排出ガス規制値の約半分という驚異的な環境性能を達成しました。

さらに、クランク軸直結ラジエーターファンを採用し、冷却効率を高めています。また、アルミニウム製U字断面ダイキャストフレームは、ホンダのスクーターとしては初の採用で、軽量かつ高剛性な車体を実現しています。このフレームは、後のスマートDioやズーマーにも採用されました。

モジュール設計とメンテナンス性

エンジンユニットは3つのモジュール（エンジン部、CVT変速機構+カバーのスイングアーム部、リヤホイール支持部）に分割されています。この設計は、将来的な新車種開発において、個々のモジュールのみの再設計を容易にするというメリットがありました。

デザインと装備

デザインは、前機種であるジョルノのレトロなレッグシールドを踏襲しつつも、バーハンドル、メッキ処理の別体メーター、マルチリフレクタヘッドライトレンズなど、独自の個性を際立たせています。

販売と歴史

ジョルノクレアは1999年6月8日に発表され、同月9日にスタンダードモデルが発売されました。当初のボディカラーは、サンドストームシルバーメタリック、ベガブラックメタリック、モスタルダベージュの3色でした。同年7月7日には、アイドリングストップシステムを2輪車として初めて搭載したデラックスモデルが発売されました。これは、当時の環境意識の高まりを反映したものです。

2000年6月にはシャスタホワイトが追加され、2001年1月には、マイルドグレイメタリックxロッシュグレイの限定車「スペシャル」5000台が発売されました。しかし、2003年には惜しまれつつも製造中止となりました。

ホンダスクーター史における位置づけ

ジョルノクレアは、環境性能とレトロなデザインを両立させた、ホンダを代表するスクーターの一つと言えるでしょう。水冷4ストロークエンジンやモジュール設計といった先進技術は、後のスクーター開発にも大きな影響を与えました。また、アイドリングストップシステムの初搭載も、時代の先を行く技術採用として注目に値します。

関連車種

ジョルノクレアの系譜をたどると、ホンダ・ジョルノ、ホンダ・ジョルカブ、ホンダ・クレアスクーピーといったモデルにつながります。また、浜崎あゆみをキャラクターに起用したホンダ・ゼストも、ジョルノクレアと同様に時代の流行を反映したモデルと言えるでしょう。

ジョルノクレアは、その技術とデザインによって、ホンダのスクーター史に重要な足跡を残したモデルとして記憶されています。

もう一度検索