ホンダ・ビート (スクーター)

ホンダ・ビート：先進技術とスポーティさを両立した伝説のスクーター

ホンダが1983年に発売した「ビート (Beat)」は、当時としては画期的な技術とスタイリッシュなデザインを融合させた49ccのスクーターです。原動機付自転車ながら、その性能と装備は、多くのライダーを魅了しました。本記事では、ビートの魅力と特徴を詳細に解説します。

世界初技術と先進的な機構

ビートは、水冷2ストローク単気筒エンジンを搭載した世界初のスクーターの一つでした。このエンジンは、同クラスのバイクでは珍しい水冷システムを採用することで、優れた冷却効率と安定した出力を実現しました。さらに、メンテナンスフリーの密閉型バッテリーや2灯式ハロゲンヘッドライトなど、数々の世界初の機構が搭載されていました。これらの技術は、当時のバイク業界に大きな衝撃を与えました。

独特の排気デバイス「V-TACS」

ビートの最大の特徴は、なんといっても「V-TACS (Variable Torque and Acceleration Control System)」と呼ばれる排気デバイスです。これは、2段階トルク切り替えシステムで、低回転域と高回転域で排気経路を切り替えることで、状況に応じた最適なトルク特性を実現します。

具体的には、ステップボード左側にあるペダルを操作することで、サブチャンバーへの排気経路を開閉します。低回転域ではサブチャンバーを開放し、トルクを増強。高回転域ではサブチャンバーを閉鎖し、メインチャンバーのみを使用することで、最高出力7.2psを発揮します。

このV-TACSシステムの作動状況は、メーター内のバリアブルパワーインジケーターで確認できます。5500rpmを境に低回転域を白、高回転域を緑で表示するタコメーターと、高出力側線上に配置された赤いランプの点滅が、ライダーに状況を知らせます。

雑誌などでは、発進時、6000-6500rpm、7000rpmでV-TACSを作動させた際のそれぞれ異なる走行フィーリングが紹介されており、状況に合わせた最適な操作を可能としていました。

スタイリッシュなデザインと充実の装備

ビートのデザインは、直線基調の半透明カウリングをまとった、非常にスタイリッシュなものでした。ボディカラーはビートブラック、ビートレッド、ビートホワイトの3色が用意され、ホイールカラーはゴールドでした。

また、サスペンションは前輪がスタビライザー付テレスコピック式、後輪がユニットスイング式。ブレーキは前後ともドラムブレーキですが、前輪には冷却用エアインテークを装備するなど、スポーティな走りを意識した設計が施されています。透過光式照明4連メーターも、そのスポーティさを強調する要素の一つでした。

純正オプションと生産終了

ビートには、リヤキャリアバッグ、ランチボックス、フロアマット、ライセンスフレーム、ボディカバー、カスタムセット（ノーズガード・サイドプロテクターバイザー・リヤサイドモールディング）など、豊富な純正オプションが用意されていました。これらのオプションにより、ライダーは自分の好みに合わせてカスタマイズを楽しむことができました。

しかし、1986年11月には惜しまれつつも生産が終了。短い期間での販売でしたが、その革新的な技術とデザインは、多くのバイクファンに深い印象を残しました。ホンダのバイク史における重要なモデルとして、ビートは今もなお語り継がれています。

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