ホンダ・CB-F

ホンダCB-Fシリーズ：優等生バイクの系譜

ホンダCB-Fシリーズは、1970年代後半から1980年代前半にかけて製造された、ホンダを代表するオートバイシリーズです。高いスポーツ性能と特徴的なデザインから「優等生バイク」の異名を取り、多くのライダーを魅了しました。本稿では、CB-Fシリーズの開発経緯、モデルバリエーション、レースでの活躍、そして現在における評価について詳しく解説します。

開発の背景：レースからのフィードバック

CB-Fシリーズの開発は、ホンダのモータースポーツ活動と深く関わっています。1969年に発売されたドリームCB750FOURは世界的な成功を収めましたが、時代とともに後発モデルに性能で劣る面が出てきました。また、北米とヨーロッパのオートバイ市場の嗜好の違いに対応するため、ヨーロッパ市場向けに新たなスポーツモデルの開発が急務となっていました。

そこでホンダは、1975年にHonda Endurance Racing Team (H.E.R.T.)を結成し、FIMヨーロッパ耐久選手権に復帰。レースで培った技術をフィードバックすることで、従来のモデルを凌駕する高性能マシンを生み出すことを目指しました。開発に携わった久米是志氏率いるチームは、「マルエヌ（ノルマンディー上陸作戦）」と称されるプロジェクトを立ち上げ、ヨーロッパ市場におけるホンダの地位回復を目指しました。

当時、カワサキZ1がサーキットで圧倒的な強さを誇っていたため、これを追撃するために開発されたのが、CB900Fです。RCB1000というレースマシンで得られた、空冷4バルブDOHCエンジンの技術を惜しみなく投入し、「サーキット最速・最軽量」のスーパースポーツを目指して開発されました。CB900Fは、圧倒的な性能でレースを席巻し、その技術は後のCB-Fシリーズへと受け継がれていきました。

車両解説：洗練されたデザインと性能

CB-Fシリーズは、CB750F、CB900F、CB1100F、そしてCB1100Rといった複数のモデルで構成されています。各モデルは、排気量や仕様が異なるものの、共通してDOHC4バルブ4気筒エンジンを搭載し、高いスポーツ性能を誇っていました。

特にCB900Fは、シリーズのベースモデルとして重要な役割を担いました。750ccクラスのCB750Fは、日本市場向けに開発され、スポーティな走りとスタイリッシュなデザインで爆発的な人気を博しました。漫画『バリバリ伝説』で主人公の愛車として登場したことも、その人気を象徴しています。

CB1100Rは、オーストラリアのカストロール6時間耐久レース参戦をきっかけに開発されました。レースで勝利するために開発されたこのモデルは、高い性能と希少性からコレクターズアイテムとしても人気があります。CB1100Fは、CB1100Rの高性能を受け継ぎつつ、より広い市場への展開を目指して開発されました。

デザイン面では、森岡實氏による「流れるようなデザイン」が特徴的です。タンクからサイドカウルへと繋がる滑らかなラインは、「インテグレーデッド・ストリームライン」と呼ばれ、後のホンダ車デザインにも大きな影響を与えました。

レース戦績：数々の勝利

CB-Fシリーズは、レースにおいても輝かしい戦績を残しました。鈴鹿8時間耐久ロードレースやAMAスーパーバイク選手権などで、多くの勝利を収めました。特に、フレディ・スペンサー選手がAMAスーパーバイク選手権で駆ったCB750Fベースのマシンは、その高い戦闘力と、シルバーを基調としたブルーラインのカラーリングで知られています。現在でも、このマシンはホンダコレクションホールで展示されています。

現在における評価

CB-Fシリーズは、現在でも多くのファンから愛され続けている旧車です。しかし、旧車ブームの中でも、価格はそれほど高騰していません。これは、部品供給の難しさや、維持管理の困難さが原因の一つとして考えられます。それでも、その高い性能と魅力的なデザインは、多くのライダーを惹きつけ続けています。

まとめ

CB-Fシリーズは、レースで培われた技術と洗練されたデザインを融合させた、ホンダを代表する名車シリーズです。その高い性能と魅力的なスタイルは、時代を超えて多くのライダーを魅了し続けています。旧車としての維持管理の難しさはありますが、その歴史と価値は今後も高く評価されることでしょう。

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