ホンダ・CBR1000F

ホンダCBR1000F：日本市場を飛び越えた、グローバルなスポーツツアラー

ホンダCBR1000Fは、1980年代、日本の自主規制により大型バイクの排気量が750ccに制限されていた時代に、海外市場向けとして開発されたモデルです。当時、国内フラグシップモデルはCBR750でしたが、海外では排気量規制が存在しなかったため、その車体をベースに、よりパワフルなエンジンを搭載したモデルとして誕生しました。

世界市場を舞台に活躍したSC21型

1986年、西ドイツ（現ドイツ）のケルンモーターショーで発表されたSC21型は、CBR750と共通のダイヤモンド型フレームに、フルカウルを纏ったスポーツツアラーでした。心臓部には、CBR750のエンジンをベースに、ボアとストロークを拡大し、排気量を998ccにアップグレード。最高出力132ps/9,500rpm、最大トルク10.6kg-m/8,500rpmという、当時としては驚異的なパワーを誇りました。

エンジンは、燃料供給システムにVG80型キャブレターを採用し、オイル容量も増量。カムシャフト駆動方式も変更され、ギア比も調整されるなど、細部にわたる改良が施されました。

更なる進化を遂げたSC24型

1989年に登場したSC24型は、SC21型をベースに、更なる進化を遂げたモデルです。フロントカウルはよりシャープなデザインとなり、ヘッドライトは2灯式へ変更。最高出力も135psに向上しました。タイヤはラジアルタイヤへと変更され、ハンドリング性能も向上しています。フレームも改良され、シート形状も変更することで、足着き性が向上しています。燃料タンク容量も拡大されました。

国内市場への進出とD-CBS搭載のSC31型

1993年から1999年まで生産されたSC31型は、外観はSC24型を踏襲しつつ、画期的な前後連動ブレーキシステムであるD-CBS（デュアル・コンバインド・ブレーキ・システム）を搭載しました。これは、ホンダが開発した先進的なブレーキシステムであり、安全性の向上に大きく貢献しました。

日本国内向け仕様も設定されたSC31型ですが、当時の自主規制により最高出力は93ps/9,000rpmに抑えられました。エンジンは、CB1000スーパーフォアとコンポーネンツを共有するSC30E型エンジンを搭載。トランスミッションは6速から5速に変更されました。

日本国内では、1993年から1995年にかけて、限定販売されました。販売台数は年々減少傾向にあり、希少価値の高いモデルとなっています。海外向け輸出仕様は1999年まで生産されました。

CBR1000Fの系譜

CBR1000Fは、ホンダの技術力の高さを示すモデルであり、その高いパフォーマンスと信頼性から、多くのライダーに愛されてきました。1996年には後継モデルとしてCBR1100XXスーパーブラックバードが登場しますが、CBR1000Fの個性的なデザインと高い完成度は、今でも多くのファンを魅了し続けています。その存在感は、後のCBRシリーズにも大きな影響を与えたことは間違いありません。 現在では生産終了となっているため、中古市場での取引が中心となっていますが、その歴史的価値と高い走行性能から、根強い人気を誇っています。

もう一度検索