ホンダ・CBR400F

CBR400F：ホンダが放った1980年代のスポーツバイク

1980年代、空前のバイクブームの中で、ホンダは400ccクラスという激戦区に、新たなスポーツバイクCBR400Fを投入しました。その人気は、ライバルメーカーを圧倒する勢いがありました。CBR400Fは、先行モデルであるCBX400Fをわずか2年でフルモデルチェンジした、野心的なマシンでした。

圧倒的なパワーと革新的な技術

CBR400Fの心臓部は、399ccの空冷4ストロークDOHC4バルブ4気筒エンジンです。CBX400Fから受け継いだこのエンジンは、圧縮比の変更やVE53型キャブレターの採用、そして革新的なREV（Revolution-modulated Valve control）システムの搭載により、大幅な性能向上を実現しました。REVシステムは、8500rpmを超えると2バルブから4バルブに切り替わることで、高回転域でのパワーとレスポンスを高めました。最高出力は58ps/12,300rpm、最大トルクは3.6kg-m/11,000rpmと、同クラスを圧倒する性能を誇りました。

軽快なハンドリングとスポーティなデザイン

軽量な車体と、角断面パイプダブルクレードルを採用したフレームは、軽快なハンドリングを実現しました。フロントサスペンションには、ブレーキトルク応答型アンチダイブ機構TRACを装備した正立式テレスコピック、リヤサスペンションにはプロリンク式スイングアームが採用されています。どちらも円筒空気ばねを併用し、優れた路面追従性を実現しました。NSコムスターホイールに装着されたタイヤは、前輪100/90-16 54H、後輪110/90-18 61H。ブレーキは、フロントにダブルディスク、リヤにシングルディスクを採用し、制動力を高めました。また、特徴的なデザインも魅力の一つで、角型ヘッドライトに大型オイルクーラー、そしてシャープなラインは、多くのライダーを魅了しました。

多彩なバリエーションと進化

CBR400Fは、発売後も進化を続けました。1984年には、ハーフフェアリングとアンダーカウルを装備した「エンデュランス」モデルや、フルフェアリングの特別仕様車が追加されました。1985年には、シングルシートとジュラルミン鍛造バックステップを標準装備した限定モデル「フォーミュラ3」が登場。さらに、車体軽量化、アルミ合金製スイングアームへの変更、アルミ合金製3本スポークキャストホイールへの変更、そしてマフラーの変更など、マイナーチェンジを実施し、更なる走りの向上を図りました。

水冷エンジンへの移行と生産終了

1986年7月、CBR400Fは後継モデルである、水冷エンジンを搭載したCBR400Rにバトンタッチし、生産を終了しました。しかし、その魅力的なデザインと高いパフォーマンスは、多くのライダーの記憶に刻み込まれ、現在でも高い人気を誇る名車として語り継がれています。CBR400Fは、ホンダの技術力の高さ、そしてスポーツバイクへの情熱を象徴するモデルと言えるでしょう。その存在は、日本のバイク史に大きな足跡を残しました。

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