ホンダ・CBX750

ホンダCBXシリーズ：革新的な技術と多様なモデルバリエーション

ホンダが1980年代に製造販売していたオートバイ、CBXシリーズ。その魅力は、高度な技術と多様なモデルバリエーションにありました。本稿では、CBX650カスタム、CBX750Fとその派生モデル、そして白バイ仕様車であるCBX650P、CBX750Pについて、詳細に解説します。

開発背景：技術革新への挑戦

1970年代後半から、ホンダはCB650カスタム、CB750F、CB750KといったCBシリーズを展開していました。しかし、これらのモデルに搭載されていた4気筒エンジンは、競合他社も同様の技術を投入するようになり、もはや特別な存在ではなくなっていました。

そこで、ホンダは新たな技術開発に踏み切ります。2輪部門の最高責任者、入交昭一郎氏の指揮の下、新世代エンジンの開発プロジェクトがスタート。既存のCBシリーズのフラグシップモデルを刷新するべく、革新的な技術が注ぎ込まれました。

開発のポイントは、以下の通りです。

空冷4バルブDOHC4気筒エンジン: 高性能と効率性を両立した、当時としては最先端のエンジン技術。
油圧式バルブクリアランスオートアジャスター機構: エンジンのメンテナンス頻度を低減し、ユーザーの利便性を向上。
燃焼室のコンパクト化: 狭角バルブ配置やピストン頭部形状の改良により、燃焼効率を高め、エンジンの小型軽量化を実現。
強制空冷式ブラシレスACジェネレーター: エンジンの後背部に配置することで、冷却効率とエンジン全体のコンパクト化に貢献。
油圧式クラッチ: 操作性を向上させ、ライダーの負担を軽減。
プライマリーシャフトレス動力伝達機構: エンジンの小型化に貢献。
エンジンの車体前方配置: 前後重量バランスの最適化と軽量化を実現。
フルラバーマウント: エンジン振動を抑制し、快適な走行を実現。
TRAC(ブレーキトルク応答型アンチダイブ機構): 前輪ブレーキの性能向上に貢献。
チューブレスタイヤ: 走行性能と安全性向上に貢献。

さらに、1981年に発売されたCBX400Fの大ヒットを背景に、「究極」を意味する「X」を車名に冠したCBXシリーズとして開発されました。

各モデルの特徴

CBX650カスタム

1982年発売。排気量655cc、6速マニュアルトランスミッションを搭載したクルーザータイプ。軽量化を追求した結果、乾燥重量は197kgと軽量に仕上がっています。液晶式ギアポジションインジケーターも装備され、当時の最新技術が惜しみなく投入されました。日本国内だけでなく、海外にも輸出されました。

CBX750F

1983年発売。排気量747cc。CBX750シリーズの最初のモデルです。2灯式ヘッドライト、ハーフカウル、総アルミ製コムスターホイールなど、スポーティなデザインが特徴です。バックトルクリミッターやオートカムテンションナーなど、先進の技術が搭載されています。また、HRCからレース用キットパーツも発売され、競技への参加も可能でした。

CBX750ホライゾン

1984年発売。CBX750Fをベースに、長距離ツーリング向けに設計されたモデルです。シャフトドライブ、角型燃料タンク、角型ヘッドライト、ビキニカウルなどを採用。ホイールサイズも変更され、落ち着いたデザインとなっています。海外輸出仕様も存在しましたが、北米向けには排気量を696ccにダウンサイズしたCB700SC(NIGHT HAWK 700S)が販売されました。

CBX750Fボルドール

1985年発売。CBX750Fをベースに、大型フルカウルを装備した限定モデルです。風防効果の向上を目的としており、ロングツーリングにも適したモデルでした。生産台数は2,000台限定でした。

白バイ仕様：CBX650P、CBX750P

各都道府県警察に納入された白バイ仕様車です。シングルシートや速度測定器などの専用装備が搭載されています。CBX650PはCBX650カスタム、CBX750PはCBX750ホライゾンをベースに製作されました。

まとめ

ホンダCBXシリーズは、高度なエンジン技術と多様なモデルバリエーションにより、多くのライダーを魅了しました。それぞれのモデルは、異なるニーズに対応した設計となっており、当時のホンダの技術力の高さを示すものとなっています。現在では生産終了していますが、その高い完成度と歴史的価値から、現在でも根強い人気を誇るモデルです。

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