ホンダ・RA121E

ホンダ・RA121Eとその進化

ホンダ・RA121Eは、本田技研工業によって1991年にF1世界選手権用に開発されたレシプロエンジンです。この記事では、1992年に使用されたRA122EおよびRA122E/Bエンジンについても詳しく見ていきます。

開発の背景

ホンダは1989年から、V型10気筒エンジンであるRA109E系列を使用してF1で戦っていました。ただし、ホンダ社内では、これが過渡期に過ぎないという認識があり、本格的なエンジンはV型12気筒であると考えられていました。そのため、1990年1月にはV12エンジンの開発が始まりました。バンク角は、V12エンジンとして一般的な60度に設定されました。

1990年7月には試作段階のエンジンが完成し、シルバーストン・サーキットで実車テストが行われ、その開発は順調に進みました。

実戦デビューと成果

1991年、このエンジンはマクラーレン・MP4/6に搭載され、F1での実戦デビューを果たしました。同年、アイルトン・セナはドライバーズチャンピオンを獲得し、マクラーレン・チームはコンストラクターズタイトルも獲得しました。しかし、同時期にルノーエンジンを搭載するウィリアムズチームが急速に力をつけてきました。

1991年のシーズン中には、可変吸気システムが導入され、中低速トルクの増加に寄与しました。1992年型では、ポペットバルブの開閉にスプリングを使わず、空気圧によるニューマチックバルブが採用されるなど、技術革新が進められました。また、セミオートマチックトランスミッションとスロットル制御の同調のためにフライ・バイ・ワイヤ技術も導入されました。このように、エンジンは継続的に改良され、1992年シーズン中にはバンク角を75度に変更したRA122E/Bが新たに投入されました。

成績の変化

しかし、1992年にはしだいにナイジェル・マンセルにドライバーズタイトルを奪われ、コンストラクターズタイトルもウィリアムズに取られてしまいました。RA109E系列は、ホンダ撤退後も無限（M-TEC）に移管されて開発が続けられましたが、RA121E系列はV12エンジンで部品点数が多く、運用コストが高かったため、無限に移管することは難しいと判断されました。

結果として、1992年をもってホンダF1の活動が終了する際に、このエンジンの開発と供給も終了しました。ただし、1993年にマクラーレンが使用するエンジンが決まらなかったため、1992年シーズン終了後のテスト走行にRA121Eが一時的に供給されています。また、中古エンジンは、本田技術研究所のスタディマシン、ホンダ・RC-F1シリーズのテストでも利用されました。

技術仕様

RA122E/B

• - エンジン形式: 水冷V型12気筒 DOHC 4バルブ
• - バンク角: 75度
• - 総排気量: 3,496cc
• - ボア×ストローク: 88.0mm×47.9mm
• - 圧縮比: 12.9
• - 最大出力: 774bhp/14400rpm
• - 燃料供給方式: ホンダPGM-FI 電子制御シーケンシャルインジェクション
• - スロットル形式: 12連バタフライ式スロットルバルブ可変吸気管長システム
• - 重量: 154kg

搭載マシン

• - マクラーレン・MP4/6
• - マクラーレン・MP4/7A
• - ホンダ・RC-F1 1.0X/1.5X

ホンダ・RA121Eとその後継エンジンは、F1におけるホンダの技術力の象徴であり、数々の革新をもたらした存在です。

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