ホンダ・RA163E

ホンダ・RA163Eエンジンの詳細

ホンダ・RA163Eは、本田技研工業が1983年に開発したフォーミュラ1専用エンジンです。このエンジンは、フォーミュラ2用のRA260Eを基にしており、排気量を1,500cc以下に抑えるためにストロークを52.3mmから39.2mmに縮小し、ターボ過給を採用しました。最初はドイツのKKK社製のターボチャージャーを使用しましたが、F1用タービンの供給が困難になったため、IHI製のターボに変更されました。エンジンの構成にはホンダ自社製のピストンが用いられ、一時はマーレ製を検討しましたが最終的には自社製に落ち着きました。

このエンジンは極端なビッグボア・ショートストローク型を採用しており、燃焼室の形状も独特であるため、燃料が完全には燃焼しきれず、出力や燃費に悪影響を及ぼすことがありました。このエンジンの開発を担当した浅木泰昭は、その不均衡な特性に苦言を呈しましたが、改善はされませんでした。実際にドライバーとしてテストを行ったステファン・ヨハンソンはRA163Eのパワーに驚嘆し、他の競合エンジンに対する優位性を実感していました。しかし、レースに投入された際には、信頼性の問題も発生し、一日に2基のエンジンを失うなどのトラブルもありました。

RA163Eはスピリットチームにのみ供給され、1983年の最終戦で登場しました。その後の1984年には後継のRA164Eがウィリアムズ・FW09に搭載されます。RA164EはRA163Eに比べてピストンの重量を軽くし、耐久性を向上させましたが、高い排気温度が問題となり、その結果、エンジンの改良が必要でした。特に高温状態下でのピストンの耐久性が不足しており、ホンダF1の総監督である桜井淑敏は1985年シーズン中に新たに設計されたエンジン、RA165Eを導入する決断を下しました。

RA163Eの仕様

• - エンジン形式: 水冷V型6気筒DOHC24バルブ
• - バンク角: 80度
• - 総排気量: 1,496cc
• - ボア×ストローク: 90.0mm × 39.2mm
• - 圧縮比: 6.6
• - 最大出力: 600PS以上/11,000rpm

搭載されたマシン

• - RA163E: スピリット・201 / 201C
• - RA164E: ウィリアムズ・FW09 / 09B、FW10

参考文献

• - 『レーシングオン・アーカイブス vol.04 レーシングエンジン』　三栄書房、2011年
• - 『F1地上の夢』（海老沢泰久、朝日新聞社、1993年）

このように、ホンダRA163Eとその後継RA164Eの開発及び搭載車両の特性は、フォーミュラ1におけるターボエンジンの進化において重要な役割を果たしました。

もう一度検索