ホンダ・VF400F

ホンダVF400F：80年代を彩ったレーサーレプリカの系譜

ホンダVF400Fは、1982年に本田技研工業から発売された400ccクラスのオートバイです。型式名NC13。そのスタイリングは、1979年のロードレース世界選手権用に開発された競技専用車NR500を彷彿とさせ、多くのライダーを魅了しました。

圧倒的な存在感：デザインとスペック

全長2,060mm、全幅750mm、全高1,160mmという車体は、ダブルクレードルタイプのフレームを採用。シート高は780mmに設定され、スポーティなライディングポジションを実現しています。

心臓部には、水冷4ストロークDOHC90°V型4気筒エンジンNC13E型を搭載。55.0mm×42.0mmというショートストローク設計により、最高出力53ps/11,500rpm、最大トルク3.5kgf・m/9,500rpmという、当時の400ccクラスとしては驚異的なスペックを達成しました。変速機は左足動式の6速トランスミッション。

足回りは、フロントにブレーキトルクセンサー型アンチダイブ機構（TRAC）付きテレスコピックフォーク、リアに中空アルミキャスト製プロリンク式スイングアームを採用。タイヤはフロント100/90-16、リア110/90-18のチューブレスタイプを装着。ブレーキは前後ともインボードタイプのデュアルピストンキャリパー式ベンチレーテッドディスクブレーキを採用。ブレーキローターには、制動力を優先して鋳鉄を使用しており、その反面、錆びやすいという欠点がありました。ホイールは特徴的なブーメラン型コムスターホイールを装備しています。

装備面では、アルミニウム合金製のステップホルダー、ジュラルミン製の鍛造セパレートハンドル、電気式タコメーターなどを採用。ヘッドライトは角型H4ハロゲンランプを搭載していました。

VF400F インテグラ：更なる進化

1984年には、フルフェアリングとブラック塗装のブーメランコムスターホイール、アウターディスクブレーキを標準装備したVF400Fインテグラが追加されました。価格は589,000円。よりスポーティで、高級感を増したモデルとして人気を集めました。

レースでの活躍と高いポテンシャル

VF400Fは、その高いポテンシャルをレースシーンでも証明しました。1984年と1985年には、鈴鹿4時間耐久レースでプライベートチームが2年連続優勝を果たすなど、数々の好成績を残しています。市販車ベースとは思えない高い信頼性と性能の高さがうかがえます。

時代の流れと販売終了

VF400Fは1985年まで製造販売されましたが、レーサーレプリカブームの隆盛や、後継モデルであるVFR400R、VFR400Zの登場により、販売を終了。しかし、そのスタイリングと性能は、多くのライダーの記憶に刻まれています。

賛否両論あった評価

VF400Fのデザインは、フロントからリアまで流れるようなストリームラインを追求したものでした。しかしながら、先行発売されていたVT250Fと酷似したフレームやメーターバイザー、インボードディスクブレーキを採用した点について、400ccクラスのバイクとしては物足りないという意見もあったようです。当時台頭しつつあったレーサーレプリカブームの中で、その競争力は徐々に低下していきました。それでも、その高い潜在能力はレースでの活躍によって証明されており、高い評価を得ていたのも事実です。

エンジンの継承

VF400Fに搭載されたNC13E型エンジンは、改良を加えられ、後継モデルであるVFR400シリーズにも搭載されました。その信頼性の高さが伺えます。

まとめ

VF400Fは、80年代のオートバイシーンを代表する名車の一つです。その優れたデザイン、高い走行性能、そしてレースでの活躍は、今もなお多くのライダーから語り継がれています。時代の流れの中で販売終了となりましたが、その存在感は、今もなお色あせることはありません。

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